シリフ霊殿
Schild von Leiden

執事の居る風景
 そろそろ一日も終わり。
 部屋に戻ると、もう寝る支度は全て整っていた。
 ベッドのシーツは新しい物に変えられ、綺麗にメイクされている。
 部屋の隅に置いてあった植木鉢は出窓の上に移動していた。
 今はカーテンの向こうに隠れてしまっているけれど、外はきっと吹雪なのだろう。
 私が扉の前に立つと、待ち構えていたように半兵衛が内側から扉を開けてくれた。


「今日はまた一段と皆に心配をかけたようだね」
「どうもそうみたいね」
 寝支度を整えながら言うと、半兵衛は苦笑した。
 彼はいつもの椅子に座って私の様子を眺めている。
「確かに今日は寒かったけれど・・・
 流石に外に出たくらいで風邪をひく程、私はもう子供じゃないわよ」
「そうかもしれないね。でもきっと皆にとっては、君は何時までも可愛いままなんだよ」
「それは今朝政宗にも言われたわ」
 子供と思っていなければ、あんな冗談めかしたプレゼントの贈り方はしてこないだろう。

「そうそう、その政宗君で思い出したのだけれどね」
「何かしら?」
「はい、これ」
 身支度を終えて半兵衛の方を振り向くと、半兵衛が私に小さな包みを差し出してきた。
「あら、貴方も?」
「そう。本当は朝に渡そうと思ったんだけど、政宗君と同時に渡すのは気がひけてね」
「貴方らしいわね。気にする事なんて無いのに」
「同時に渡すのが嫌だっただけだよ」
「はいはい」
 私は笑って半兵衛にもらったプレゼントをベッドの枕元に置いた。
「開けてくれないのかい?」
「明日の楽しみにしようかと思ったのだけれど。開けた方が良いかしら?」
「出来ればね」
 半兵衛が珍しく楽しそうな顔をしているので開けてみると、小ぶりのクッションだった。
 きちんと、ベッドの脇に置いておくのに丁度良さそうな色使いになっている。
「それなら枕元にも置いておけるだろう?」
「そうね。・・・もしかして私の枕元が寂しいと思っていた?」
「これでも毎朝起こしに行っているからね」
 私は苦笑して枕元にクッションを置いた。確かに何も無いと少し寂しい。


 部屋の電気を落とすと、半兵衛の気配を残して全てが闇に落ちた。
 今日は本当に色々あった、と今更ながらに思う。
 色々あっただけでなく、色々貰いもした。クリスマスだからだと思うけれど。
 ・・・でも、良い一日だったわ。

 直後にした小さなくしゃみのお陰で、部屋は再び明るくなった。



身辺担当:竹中半兵衛
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