獣の子供が物にじゃれたり喧嘩をするのは、将来獲物を狩る為の練習だと聞いたが本当だろうか。
どちらにせよ獣の牙や爪が人間のそれと違い、戦う方面に特化しているのは事実である。
そして獣同士はその意義意味合いに関わらず喧嘩というものをよくする。
「こら、幸村、政宗っ!血が出てるじゃない、止めなさいっ!」
故に、このような事もままある。
「それで?最初はどっちが手を出した訳?」
主さえ無事なら式神の怪我はすぐに治る。
けれども怪我の原因が内輪もめだった場合も敵襲と同様の扱いになるのだろうか。
この二人の怪我の治り具合で確かめてみようかな、と不謹慎にも好奇心が沸いた。
「・・・政宗殿が某の餅を取ったのでござる」
尾でひっぱたかれた頬に血を滲ませながら幸村が隣を睨む。
「だから俺は知らねえっつってんだろ!」
同じく、鱗の上から尾にくっきりと歯形をつけた政宗。
子供の喧嘩の原因など得てして下らないものだが、本人達にとっては真面目な問題である。
「餅?あの青磁のお皿に乗ってた奴?」
「ご存知でござるか?」
「いや、ご存知も何も・・・ごめん、それ食べたのあたしだ」
「「はぁっ!?」」
「ごめん、だって元就が食べてたから・・・ああ、おやつかなって」
・・・あれ?
血を見るような喧嘩もある