バターン、とドアを破壊せんばかりの破裂音。
この開け方は真田幸村だな、と予想をつけて振り向くと、果たしてその通りだった。
「おお、政宗殿も同じ学級でござったか!また宜しくお頼み申す」
「Ahー……まぁ適当にな」
幾ら宜しくされた所で、自分は滅多に教室に来ないかもしれないというのに。
煙草をふかしながら気の無い返事をする。
と、それを幸村がものすごい勢いで取り上げた。
「ンだよ、固ェな」
「校舎内は禁煙でござる!」
「ツッコミ所そこかよ」
「丈夫な赤子が産めなくなるとも聞きますしそれから、」
「待て、何かおかしいぞ今の」
ところで彼が握っているのは煙草の火元部分なのだが熱くないのだろうか。
「まぁまぁ竜の旦那、ところでさ」
幸村の手から煙草を取り上げ、一体何処から出したのか携帯灰皿にしまいながら佐助が言った。
「さっき鬼の旦那が言ってたんだけどね、うちの担任先生だって」
「#天原?」
「うんそう。今毛利の旦那が迎えに行ってる」
聞き覚えの無い名だ。視線を明後日の方角に向け、しばし記憶を巡らす。
尤も政宗が聞き覚えのある教師の名前といえば生活指導か校長ぐらいのものだ。
ろくに授業に出ないので、担任や科目教師の名すら朧なのである。
「覚えが無ェな」
「だろうと思った。ま、去年入ってきた新任の先生だしね」
それでは彼の記憶に残っていない訳だ。
「#天原#奈々先生。担当教科は確か……英語だったかな?」
「女かよ!」
「いやー俺様がこんなテンションで話してんだからフツー女でしょ」
政宗の勘違いをへらへらと笑って流す佐助。
確かによく見れば普段より浮かれているような気がしないでもないが、
普段から手の内が読めない笑い方をしている人間なのですぐには気付かない。
「で?そのってセンセーは美人なのか?」
「さぁねぇ?」
「おい」
「だって、うかつに色々言って旦那のターゲットになっちゃったら嫌じゃん?」
その言葉だけで、少なくともその担任がこの男の好みである事だけは分かった。
どこまで本気かは例によって定かではないが、
少なくとも余計な恋敵を増やしたくない程度には気に入っているのだろう。
「旦那結構手ぇ早いし」
「言ったなテメェ、絶対motionかけてやる」
「うっわ、真田の旦那聞いた?この人自分の担任に手ぇ出す気だよー」
「! はっははは破廉恥でござる!」
「おい待て、最初に言い出したのは猿飛だろ!」
「はれんちでござるぅぅぅ!」
「人の話を聞けぇぇぇ!」
彼女が学級委員に連れられて初めて教室にやって来た時、教室で肉弾戦が繰り広げられていたのは、
実はこういう経緯であったりする。
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