体育祭の季節ですね。
うちの学校は人数が多いので、紅白じゃなくてクラス別の点数対抗戦です。
たまーにね、ほら、あるじゃないですか。
普段はどうあれ、こういう勝負事の時にだけやけに結束力の強いクラスって。
うちは普段は仲の良い人間こそいるけど基本的にバラバラなクラスなんですよ。(皆結構個性的だし)
けれども共通の敵が出来ると何故か結束力が強まりまして。
「Ha!血が騒ぐなぁ、幸村?」
「うむ、滾りますな、政宗殿!」
「はっは!ここで退いたら男じゃねぇよなぁ、元就?」
「ふん、我の策が狂うとでも思うか、元親」
こんな感じに。
でもこれは別に勝負事に限った事でもないんだよね。
例を挙げると、夏休み前の期末試験とか。(オチが予想ついたって?まあね)
「皆ー#奈々先生と温泉に行きたいかー!」
「「「おー!!」」」
まぢすか。
聞いてないよ、あたし。
(ちなみに今音頭を取ったのは慶次。)
何時の間にか学年で総合優勝したらあたしと温泉に行くという話になっていた。
が、温泉なんて何時何処にどうやって行くんだよ。
「この体育祭終わったら二、三日代休があるから、そん時」
「いや、何処の温泉。予算だって今回ばかりはクラス費からは落ちないよ」
「我の家が経営している宿の一つを数日貸し切る」
「あ、元就ん家ってそんなにお金持ちだったんだ」
いやいやいやいやいやそうじゃなくてさぁ。
「瀬戸内の幸が食べ放題だってよ」
「B組ふぁいとーおー」
いや、自分でもちょっと現金だなぁとは思ってるんですよ。
これでも。
すんなり承諾する気になったのは瀬戸内の幸に釣られたっていうのと、
どうせそう簡単に総合優勝なんて取れやしないだろっていう淡い期待。
淡いんですよ。だってこのクラス体育の成績ものすごく良いんだもん。
元就だって授業出るようになってからはうなぎ上りですからね。
今だってあたしの座ってるベンチの真ん前のトラックを、
B組のクラスカラーを身にまとった二人がものすごい独走状態で駆け抜けていく。 あれは佐助とかすがかな。障害物出るって言ってたし。
身軽な二人だから、障害物なんてものともせずにひょいひょいと走っていく。
しかも次のレースには小太郎が控えてるっていうね。わーお。
100m走は政宗と幸村のライバルコンビに武蔵が乱入した計三人。
武蔵なんか他の選手ふっ飛ばしてまで走ってるけどあれ反則じゃないんだろうか。
政宗も今一人真後ろにいた人間が犠牲になったっぽいし……
ああ、幸村の後ろにも何か転がってるや。まあいいか。
体格の良い元親と慶次は棒倒し。
アニキは他クラスにも舎弟持ってるから、一睨みすると皆譲っちゃうんだよね。
慶次なんか棒の上に立って踊りだす始末。ちょっとちょっと、落ちますよ。
圧巻だったのは騎馬戦かな。
忠勝と家康の騎馬を総大将に置いて、その後ろに控えた元就が敵の動きを見て指示を出す仕組み。
お前ら前世は戦国武将かっていうくらい絵になってました。
が、うん、元就くん、元親の騎馬を特攻させるのはやめようか。
簡単に説明するとこんな感じです。勿論どれも圧勝。
あえて言うなら二人三脚は苦労したみたい。だって皆基本的にバラバラだから。
政宗と幸村のコンビは(後ろの走者が吹っ飛んでた事を除けば)マシだけど、
元親なんて暴走しすぎて元就が引きずられっぱなしだったしね。
後で殴り合いの喧嘩にまで発展するし。何で君らコンビ組んだの。
そして忠勝と、家康……?いや、無理でしょう君らは。
あ、勿論あたしだって頑張ったんだよ。瀬戸内の幸の為に。
何って先生レースを。半兵衛押しのけてまで頑張ったの。
「あれ、先生レースって点数に入らないんじゃ」はい、佐助うるさい。
そんな強さだから、結果発表後のあたしの脳内は瀬戸内の魚介類一色でした。
……うん、食い物に釣られた罰が当たったのかもしれない。
閉会式終了後(勿論うちの優勝です)、帰る仕度をしていた元親が、
「そーいや先生聞いてたか?」
「え、何が?」
「元就ん家の温泉宿、混浴だって話」
そんなベタな。
「すまぬ、言い忘れた」
「そんなぁ元就さん!?」
先生キミの事だけは信じてたんだけどな!?
「あ、案ずるな、宿の食事に紅葉まんじゅうもつけてもらおうぞ!」
「微妙な優しさだぁぁぁ!!」
おまけ
「あ、かすが胸おっきい」
「そんな……先生こそ、その……」
「いいんだ、気ぃ使ってくれなくて……」(ずーん)
「い、いえっそんな!その……形は、良い……」
「うん、必死のフォローありがとう」
(そして覗きor聞き耳立ててる男子連中)
「いいねえ、女の子同士って。恋の話題に発展しないかなー」
「は、ハレンチであるぞ前田殿!」
「とか言いつつ旦那も加わってるしねー」
「野暮な事言うなよ、男のRomanだろ?」
「ぐ、愚劣な!我はそのような卑劣な行為は……」
「ほー、一人だけ優等生気取る気か?
撮ったやつダビングしてお前の家に送りつけてやっからな」
「なっ……!」
「何をやっているお前ら……」
「げっ、かすが!」
(かすがに鉄拳制裁をくらいました。)
「いってー……」
「ちくしょーかすがの奴、邪魔しやがって」
「何故我まで殴られねばならぬのだ……」
「止めなかった時点で同罪だ」