シリフ霊殿
Schild von Leiden

狗とそれから
「様子はどうだ」
 この副長のこういう所が嫌いだ。
 デリカシーが無いって言えば良いのか、己が気になった所は踏み込んで調べずには居られない性質らしい。
 まァ警察ってのはそーゆーのが仕事みたいなもんだしそういう意味じゃこの人にあってるんだろうが、
 俺の部屋でそれやられんのがどんだけ俺のカンに障るか分かってんのかこのマヨネーズフリーカー。
「何がでィ」
 だから思いっきり出てけオーラ出して睨んでやってんのにこいつは一向に気付かない。
 アンタそんなんだから女にもてねェんだよ。
「#朔夜だ。どうしてる」
「今俺に頼まれた駄菓子買いに行ってやすけど」
「何させてんのォお前ェェ!」
「いーじゃねェですか俺の部下なんだから」
 あとあいつが駄菓子ってもんを知らないみたいだったからってのもある。
 いかにも良いトコの坊ちゃんっぽい知識の偏り具合に腹が立たないでも無かったけど、
 スナック菓子を手に首を傾げる姿は不快というよりむしろ阿呆っぽくて愛嬌さえあるように見えたから、
 食わしてやるから買って来いと小銭を持たせて走らせた。
 確かこないだ教えたから百円と間違えて一円玉出すような事はもう無いだろう。
「心配しなくても手違いは起きてやせんぜ」
「起きてからじゃ遅ぇだろうが」
「入隊してからどんだけ経ってると思ってんですかィ。
 幾ら脳味噌ライクアババロアな俺にだって学習能力くらいあらァ」
「……手綱の取り方は心得たって事か」
「手綱取ったっつーか、馴らす事に成功したって感じですかね。
 他の奴はどうだか知らねェが、多分俺が刀振り上げてもあいつァ襲って来たりしねェでしょうよ」
 それはもしかしたら、多分未だあいつが俺に殺されたがってるってのもあるかもしれない。
 けどまァそれはこいつに言う必要は無い事だ。
 そもそも確信が無い、ただの俺の推測だから言った所で馬鹿にされるだけだろうし。
「何なら確かめますかィ」
「失敗したらどうすんだ」
「ですよねー。まァ#朔夜の様子が見たきゃ、もう少ししたら戻って来るだろうし……」
「沖田さんっ」
 来た。
 両手に溢れそうな程の駄菓子を抱えて、ああ婆ちゃん袋持たせてくれなかったのか。
 それともお前もしかして買ったものは袋に入れて持って帰るもんだって知らなかったのか。
「頼まれた買い物、これで良いですか?」
「んー、いいんじゃね?」
 #朔夜が土方に簡単な挨拶をしている間に、畳の上に散らばった菓子を漁る。
 んまい棒が味全部揃ってる。確かに出来るだけ沢山の種類買って来いとは言ったけど、細かい奴だ。
 とりあえず俺の好きな味だけキープして、そこから更にあいつの好きそうな味を見繕う。
 手が汚れないよう慎重に袋を剥いてから、#朔夜、と声をかけた。
「はい」
「菓子食わしてやるっつったよな。食わしてやるから口開けてみ」
 何の警戒もせずに小さい口が開けられる。
 あんな状況下ででも無ければ本来こいつは驚く程に無防備だ。
 土方が不思議そうにこっちを見てるのをちらっと確認してから、
 突っ込むのに丁度良い棒状をしたスナック菓子つまりんまい棒を思い切りその口に押し込んだ。
「ふぐゅ」
 #朔夜の口から間抜けな声が上がる。
 面白くなって何度も喉の奥を突くと、その度に苦しそうな呻き声が漏れた。
「沖田は……っん、も、自分で食べれまふ、からぁ」
「んじゃ抜いてやるから舐めて」
「はふ」
 口から菓子を引き抜くと、言われた通り舌を出してそれを丹念に舐める。
 もうぐしょぐしょに湿気て食えたもんじゃねェだろうが、これが正しい食い方だと思ってるんだろうか。
 ふと気付いて、こっちをずっと見てたらしい土方の方を振り向く。
 呆れたような諦めたような安心したような表情で煙草をふかしていた。つーか人の部屋で煙草吸うなよ。
「どうです、躾はばっちり」
「……一応言っとくがここアダルトサーバーじゃねェからな。裏でもエロ自重してっかんな」
「心配しなくても下の口はまだこれからで」
「いけませんんんんん!!」



銀魂ならメタネタ言わせてもいいと思った、今は反省している
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