「あれ、武器を持ってお休みになるんですか?」
愛用の槍を手に寝所への廊下を行くのでそう声を掛けた。
「外で不寝番が待機しておりますのに」
「うむ、毛利殿に武将たるもの武器を手放してはならぬと言われてな……」
「あーあの人」
確かにそういう類の警戒を怠らなそうな人ではある。
そもそも毛利といえば周囲に反感を買っていそうな風評だし、闇討ちにくらい備えるだろう。
「でも幸村様……大丈夫ですか?」
「うむ!」
「……そですか」
何とは言わず不安になったので、
不寝番に事情を話した上で、夜中にこっそり『敵襲!』と叫ばせて貰った。
案の定ごっとんばったんとものすごい音。
『ぬおっ!某の槍はいずこ!』
あ、やっぱ蹴っ飛ばしちゃってたか。
幸村は寝相が悪そう