シリフ霊殿
Schild von Leiden

変異種
 疲れていたなんて言い訳にはならない。
 うたた寝をしていたのが悪い。それだけ。

「#ナナ、これは君の仕業か!」
「おお出た、ナドレ!」
 長い紫暗の髪を振り乱してティエリアは整備室に駆け込んで来た。
 ナドレを知らないミレイナがアーデさん女の子みたいですぅ、と暢気にのたまっている。
「苦労したんだよーその色のエクステ探すの」
「誰も探せとは言っていない!」
「まぁ、あたしが趣味で探しただけだしねー」
「万死に値する!」
 叫んでエクステに手をかけるティエリア。
 あーあ、勿体無い。まぁもうフォトってあるし別にいっか。
「っ……!」
「あーあーそんな無理矢理引っ張ったら自前の髪まで抜けちゃうでしょうが」
「誰のせいだ……!」
「はいはいあたしですよねー」
 まさかいきなり引っこ抜こうとするとは思わなかったんだよ。
「ほら、取ってあげるからこっち来て」
「……」
 ティエリアはまだ少し不機嫌そうだったけど、
 黙ってあたしの方へやって来ると、長い髪をばさりとあたしの前に差し出した。



 あたしの手の中に外されたエクステが次々と溜まっていく。
 うーん、やっぱりちょっと勿体無い。
 こっちに背中を向けてる隙にリボンでも付けてやろうかとも思ったけど、
 ミレイナに見せたが最後反応でばれるので止めた。
「うーん……」
「何だ」
 あら、聞こえてましたか。
「や、別に何でも無い」
「何でも無かったらあんな声は出ないだろう。何だ」
「いやいや、本当に何でもないっていうか大した事じゃないんだけどさ」

 ティエリアの髪って綺麗だなぁと思って。

「なっ……!?」
 外し終わったエクステを横に置いて、短くなった髪を指先で梳く。
 うーん、良い手触りなんだけどやっぱり短いのがなァ。
「え、綺麗な髪の毛って長い方が触り甲斐があって良くない?」
「……っ」
「アーデさん顔が赤いですぅ」
「ミレイナ!」
「?」
 まぁ耳と首筋が赤いのはここからでも分かりますが。



ダブルクロスのDロイスをお題にした企画
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