シリフ霊殿
Schild von Leiden

泣きっ面に蜂
「ティエリアー」
 廊下を歩いていると突然後ろから圧し掛かられた。
 重い。
「ねーちょっと聞いてよ先生がさぁー」
「話を聞いて欲しければまず可及的速やかに俺の上から退け……!」
「え、重い?これでもダイエットしてんだけどなぁ」
 言いながらも更に体重をかけてくる。
 仮にこれの体重が平均もしくはそれよりやや下であったとして、
 それを同年代の男性の平均的筋力で支えられるかというと、甚だ困難と言わざるを得ない。
 つまり彼女がいかにダイエットをしていようとも、全体重でもって圧し掛かられれば重いという訳だ。
「分かったなら退け」
「……一々理屈こねないと文句も言えないの、あんた」
 軽口を叩かれたが、一応退きはしたのか圧迫感は無くなった。
「そうそうそんな事よりさー、さっき先生に話しかけようとしたら逃げられたの!酷くない?」
 ……またか。
 この手の話を聞かされる度に、言いようの無い疲労を感じる。
 ただ話を聞くだけだというのに。
「君がしつこいから嫌気がさしたんだろう」
「酷っ!先生に振られてただでさえブルーなのに追い討ちだよ!」
「俺には関係無い」
「ある。代わりにティエにセクハラする」
「なっ……こら、触るな、離せ!」
 馴れ馴れしく触れてきた手を払いのけると、冷たいだの詰まらないだの言いながら笑う。
 同じ事を『先生』とやらにされれば、先刻のように落ち込むに違いないだろうに。
 つまり、彼女にとって自分の存在は所詮『先生』以下のものなのだろう。

 それが嫌だ、なんて、気が付かなければ良かったのに。



学パロにしなくてもいけた気がちょっとします
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