シリフ霊殿
Schild von Leiden

無意識下性善説
「あ、こら!また残してるな」
 食事時。
 白いトレイに人参だけがぽつんと残されているのを発見したロックオンが、
 こっそりトレイを片付けようとしていた子供を叱り付ける。
「ったく、#ナナは本当に人参が嫌いだなー……」
 数あるメニューの中からどれを選ぶかは各自の自由だが、
 どれも全て綿密な栄養とカロリー計算の上に出来上がっているもの。
 選んだ以上は体調管理の為にも全て摂取しなくてはならない。
 ……とは、実質子供の世話を請け負う羽目になった『彼』の言。
 勿論そんな一言で子供の偏食が直る訳も無い。
「食べたくないか?」
「……」
 こっくりと頷く。
「そっか……」
 しかし、教育者としてもここで引き下がる訳にはいかない。
 幸いにして長男であった彼は、この年頃の子供の扱いはある程度心得ていた。
 まさかこんな所で使うとはな、と苦笑しつつ話を切り出す。
「でもな、人参食べないと身体が強くならないだろ?
 そうするとその内身体が軽くなってふわふわ浮かぶようになっちまうんだ。
 特に宇宙だと無重力も多いからな、お前なんかトレミーの天井にふわふわと……」
「何っ、それは本当か!」
 がたんと椅子を蹴って立ち上がったのは怯えた表情をしている子供……
 ではなくその保護者、もといガンダムヴァーチェのマイスター。



「…………いや、お前が信じるなよ」



これ保護者ロックオンだな……
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