シリフ霊殿
Schild von Leiden

真夜中の爆音
 目が覚めると一夜を共に過ごした彼は居なくなっていた。
 時刻は真夜中、けれど明るさも暗さも無い宇宙に時刻などは意味が無い。
 ああ、出撃したのか。居なくなったもう一人の分まで毛布を手繰り寄せながら思う。
 別に不思議な事でも無い、臨時でミッションが入る事ぐらいあるだろう。
 艦内放送に叩き起こされなかったという事はここは安全という事でもある。
 けれども彼が連絡を受けてベッドを降りて部屋を出て出撃していったというのに、
 自分は今の今まで気付かず眠っていたままだったという事に無性に腹が立った。
 まずは自己嫌悪。
 モビルスーツの発進時には少しといわず爆音がする。
 そもそも連絡を受けた時点で一言二言会話も交わされていただろう。
 枕元でそんな事をされていたというのに全く気付かなかった。
 こんな何時命の危機が来るか分からない組織で、そこまで気を抜いていたのか。
 同時に自分を置いていった彼にも腹が立つ。
 何故起こしていってくれなかった。自分の見送りなど不要だというのか。
 自分よりずっと死ぬ可能性が高い位置に居る癖に。
 問えばきっと、寝ているのを起こすのは悪いと思ったとでも言うのだろう。
 多い訳ではない休息の時間を減らしてしまうのは申し訳無い、と。
 巫山戯るな。
 生きて帰ってくる保障も無い身を見送らなくてどうする。
 これでもし帰って来ないような事があれば、自分は死ぬまで後悔するだろうに。
 ただでさえ少なくとも彼の無事、帰還の知らせを聞くまでは、
 こうして一人ベッドの中で不安に怯えて過ごさなくてはならないというのに。





 着艦します、というアナウンスと、再度の爆音。
 悔しいからずっと眠っていた事にしてやる。
 例え今回彼がどんなに活躍していたとしても、労いも出迎えもしてやらない
 それが意趣返しだと、彼が気付くかどうかはさておいて。
 何事も無かったかのように隣に戻ってくるロックオンの気配を察しながら、#ナナは眼を閉じたままそう考えた。



キャラ表記、ロックオンじゃなくてニールにすべきだったかな(ここで言う
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