シリフ霊殿
Schild von Leiden

大切な貴方の写真
 本当に良いものには、時を経ても感じさせる何かがあるものだ。
 例えばいくら未来設定でも現実の現代全然こんなじゃないよねとか、
 今時絶対見かけない衣装とか、小道具とか、台詞回しとか、
 そんなものは全部横へ置いておくとして。

「良いよね、こういう演出」
「何がだ」
「こーゆーの」
 著作権なんて数百年前に切れた、古い映画のワンシーンを指して言うあたし。
 主人公が敵に撃たれるんだけれども、胸ポケットに入っていた何かで助かる。
 勿論主人公だからとか悪運が強いと言えばそれまでなんだけど、
 なんかこう、ロマンじゃないですか?『こいつのお陰で助かったぜ』って。
「胸ポケットに入ってた愛しい人の写真が代わりに銃弾を!いいねぇ味な演出だねぇロマンだねぇ、
 あたしもやってみたいなぁ」
「今時電子データで無い写真など滅多に無いがな」
「……あたしあんたのそういうムードないとこ嫌い」
「……」
 ちらり、とむくれたあたしに視線をやるティエリア。
「だが生還する事で君が喜ぶというのなら、そんな事くらい幾らでもしてやる」
「……くっさ」
「黙れ!」



ティエリアの感情表現は、自覚すればストレートだと思う
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