シリフ霊殿
Schild von Leiden

ブクレシュティの人形師
 複製DNAの螺旋から発生し、人為強化組織とナノマシンの骨肉を授かり、人工子宮と羊水から生まれ落ち、
 0と1の羅列の中で育ち、演算処理コンピューターの定める通りに在る。
 造られた存在であるという自覚はあったし、それでも構わないと思っていた。
 人間の手で人間に似せて作られた、けれども人間では無い自分。 
 事実は変えようが無いのだから、抗っても仕方が無い事だ。
 造られたからには目的がある。それを果たす事こそが自分の全て。


『ティエリア』


 言い換えるならば『人形』。
 初めてその言葉を知った時、自分にふさわしい言葉だと思った。
 人間の手で人間に似せて作られた、けれども人間ではないもの。
 人間の為に作られた、ただ人間だけを存在理由とするもの。


『ティエリア』


 ああ、自分は人形で良いではないか。
 彼等と同類項にされるのが嫌なら、自らをそう称すれば良い。
 基本定義は変わらないし何より、


『ティエリアは綺麗だねぇ』


 人形とは確かこうして愛でられる事を至福とするものであった筈だ。



感情の薄い、理論的にしか物事を考えられない、人工生命。好きです
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