シリフ霊殿
Schild von Leiden

恋色マジック
 新参者っていうのは割と大変だ。
 特にここ、プトレマイオスに関しては。
 この組織は長い間の計画と潜伏の末に活動を開始したものだから、
 必要な訓練やら説明やらは殆どのクルーがすっかり心得てしまっている。
 だからあたしだけがまるでおのぼりさんのようにあれこれ混乱しているのだ。
 正直、余り愉快な立場とは言えない。
「#ナナ」
 だから一刻も早く抜け出そうと頑張っている最中ではあるんです、が。
「模擬戦の相手をお願いできる?」
「はぁ」
 こうして触った事も無い機械の操作をいきなりやらされたりするんだから困る。
「ティエリアが次回ミッションのシミュレーションをしたいっていうから」
 しかも相手はここ随一のムッツリ……もとい、デカブツ。
 あっ違ったカタブツだった。まぁデカブツでも間違っちゃ居ないんだけどさ。




『では、これより模擬戦を開始します』
 操作方法は聞けば覚えるのは簡単だった。
 早い話次回ミッションの敵陣営にそっくりな攻撃を相手に浴びせれば良い。
 基本はデータを入力すれば自動で作ってくれるから、あたしがする事は専らモビルスーツの操作。
 近接型、射撃型、重装備型とあれこれ種類が揃っているのは良いけど、
 それぞれに操作方法が違うもんだから異様にめんどくさい。
 とはいえちんたらしてるとあのムッツ……カタブツにあっさり勝たれて後で色々言われるに決まってるから必死で覚える。
 えーと確かこれがレーザー砲で、おおこうすると火力調整出来るのか。
 モニターを見るとデカブツは油断しているのか割と良いポジションに居る。
 チャンス、積年の説教の恨み!
 タイムラグが大きくなりすぎない程度に調整した最大火力を叩き込む。


「ふふふ、喰らえティエリア・アーデ! 魔砲『実りやすいマスタースパーク』!」
「なっ!?」


 狙いは的中。
 シミュレーションとはいえ機体が中破してしまったので演習は中止になった。
 後で計算したらデカブツのバズーカとほぼ同じ威力にまでなってたんだそうだ。
 まぁそんな敵が居る可能性も無くは無いという事で、あたしは一応お咎め無し。
 ただし技の名称に関しては何故かデカブツのパイロットからがっつり怒られた。
 良いじゃないか、適当に出したレーザー砲に何て名前付けたって。



実りやすいところがミソです
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