シリフ霊殿
Schild von Leiden

ERROR・ERROR・ERROR
 手持ち無沙汰に何かをする、というのがティエリアは苦手である。
 そもそも自分にとって不必要な事をする気が余り無い。
 かといって今自分がすべき事も特には無い訳で、困った挙句にヴェーダへアクセスするのはよくある事だった。



「ヴェーダ……」
 この空間は落ち着く。外界の一切を遮断出来る。
 溜まった思考を整理するには最上の場所であった。
 計画の進行度合、ミッションの内容と結果、それによって生じた修正箇所。
 ただでさえ最近は目まぐるしい勢いで情報が更新されていくので、整理も定期的に行わなくては息が詰まってしまう。
 特に対人関係における項目の整理が面倒で困る。こればかりはヴェーダに頼る訳にもいかないからだ。
 しかもこれが最近何故か急に多くなって来て、ティエリアは対応に追われていた。
 刹那・F・セイエイ。アレルヤ・ハプティズム。スメラギ・李・ノリエガ。
 落ち着いた空間の中で、一人一人順に整理してゆく。
 ミッションプランのように綺麗に纏め上げる事は出来ないが、
 時間をかければそれぞれに彼なりの対応策を講じる事が出来る。

 そうして片付けていって、ある人物へ至った所でティエリアの思考が止まった。
 かなり早期に要整理項目として名が挙がっていたものを、処理に時間がかかりそうで後回しにしてあったものだ。
「……#ナナ・#ヘヴンフィールド」
 彼女は実に不可解だ。
 プトレマイオスのクルーの一人、それ以上でもそれ以下でも無い筈なのに、何故か彼の中では今までの人物と同じく『要注意人物』にマークされている。
 確かに人懐こく誰にでも近付ける娘で扱いは面倒だが、問題はそこでは無い。
 どのような能力によるものかは不明だが、彼女が傍に居ると思考が乱れるのだ。
 邪魔をされないようにと一番思考に集中出来るここまで逃げて来てみても、
 彼女の事になると急に考えが纏まらなくなった。
 考えれば考えるほど思考が混乱して、結論の出る気配がしない。
 何の気無しに名を呟くと、脳が痺れるような心地がして更に拍車がかかった。
 自分以外の乗組員はこんな事になっている様子は無いのに、一体自分はどうしてしまったというのだろう。
 このままでは計画に 支障が

「ヴェーダ……俺は、僕はどうすれば……」



ヴェーダを見てると、川原泉の漫画のマム・ディルフィーヌを思い出します
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