シリフ霊殿
Schild von Leiden

ワン・コールド・デイ
「寒ィ」
 巡視の時間ですよ、と呼びに来て見れば案の定これだ。
「#奈々、代わりに行って」
「嫌ですあたし夜勤明けでこれから寝るんですから」
 ストーブ、火鉢、カイロに半纏。これは逆に暑いんじゃないだろうか。
「子供は風の子っていうじゃないですか。
 マフラーと上着くらいなら許可しますから、とっとと行ってきて下さい」
「俺南風の子だから」
「そのまま台風通り越して温帯低気圧にでもなってしまえこのクソガキが」
 いかんいかん、相手は仮にも上司だ。
 とにかく何とかなだめすかして巡視に行かせねば(あたしの睡眠時間が減る)。
「寒いと行く気しねえー」
「部屋の中に焼夷弾でもぶち込みましょうか?暖かくなりますよ」
 炎上してんじゃねーか!という副長の突っ込みが聞こえた気がしたけれど、沖田さんはそれでも動かない。
 相変わらずむー、と唸りながら火鉢にかじりついている。
「#奈々が居てくれたらあったまる」
「あたしこれから寝るって言いましたよね?」
「あったかくなんねえと行く気しねえ」
「それ暗にあたしに巡視について来いって言ってます?」
「分かってんならさっさと支度しろィ」
 こんのわがままプーがいつか絶対泣かしちゃる。
 溜息を吐きながらあたしは沖田さんとペアだった筈の人を探しに行った。
 勿論、巡視の時間代わってくれない?と聞きに行くために。

 (終わったら誰に何を言われようと惰眠を貪ってやる!)



「これでテロリスト見っけて暴れたら温まったとか言ったらあたしキレますからね」
「言わねーよ。もうあったけえし」
「え、早……て、何カイロ持ってきてんですかあんた!」
「ケチケチすんなィ。カイロの一個や二個で動きの鈍るもんじゃなし」
「鈍りますよそんなでかいの!」
「じゃ#奈々に一個。これでいいだろィ」
「……」
 これ、もう半分くらい生温くなってんですけど。
 まぁいいか。
「一個減った分は#奈々の体温で補給ー」
「離れてくださいセクハラで訴えますよ。」



南風ってあったかいとは限らないんじゃないだろうか
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