人間が一度に認識できる数は7までなのだそうだ。
8だとか9だとかそれ以上の数は本来「沢山」としか数えられなくて、
二つの数に分けて計算した上でようやく量を認識する仕組みになっているらしい。
「だからほら、総悟君が170でも150でも沢山な事に変わりはないんだよ!」
「……個数と数値は、違うんじゃねェかィ?」
「ぁ……」
「お前のフォローってたまに全然フォローになってねーよな」
無言で紙の印刷を睨む沖田の肩を土方が叩く。
「諦めろ総悟、測定用紙破いてもお前の身長170は変わらねぇ」
「破くなんてこたァしませんや、焼却処分でさァ」
「だから何やっても無駄だっての」
「何でィその言い草ァ、177センチの余裕ってやつですかィ?」
「いや余裕とか訳判んねーってか何どっからか真剣持ち出してんのォ総悟君!!」
「羨ましーんで7センチ分わけて下せェ。大体目の上から先ってトコですかねィ」
「やれるかァァァ!!!」
「あの二人仲良いよねぇ」
景色でも見るように額に手をやりながら、どたんばたんと暴れまわる二人を見物する当事者その1。
(プラス、山崎)
易々と両断されてゆく机や椅子にツッコミを入れる人間はもはや存在しない。
「ていうか、喧嘩のそもそもの原因何なんですか」
「ん〜なんかねぇ皆で身体測定の結果見せ合いっこしてて、
あたしが総悟君より身長高かったのに総悟君がショック受けてそれから色々と」
「……高かったってどれくらいです?」
「総悟君170、あたし172」
微妙な値ではあるが沖田の気持ちがまるきり判らない訳でもない。
「しかも170って微妙に背伸びした上での数値だし。切ないよね〜」
「いや『よね〜』って当事者が言っていいんですかそんな」
「だって今更縮めないもん」
「そりゃそうですが」
ちなみにその八つ当たりに遭う土方への同情は一切無しである。
絶対沖田は170もないと思ったので