「そこを退け、小娘」
どきません。
「貴様の後ろに毛利元就が居るのは分かっている」
「毛利元就の首を差し出せば、貴様は助けてやらんでもないぞ!」
お断りいたします。
躊躇無い私の一言に、流石に相手も驚いたようだった。
ええ、確かにあのお方はこの先に居られます。私でも容易に首は獲れます。
けれどそうすればこいつらは確実にこの先に侵入ってきてしまう。
それでは駄目なのだ。何があっても此処を通しはしない。
「此処は抜かせません。元就様は私がお守り致します」
刀を構える私は、彼らには主君を守って戦う忠臣に見えているのだろう。
あながち間違っている訳でも無い。
小さな墓、まともな墓標さえ無い、野垂れ死んでいるのではないだけマシという程度の、
でも私はそこを彼らに踏みにじらせる訳にはいかないのだ。
五体満足で土に還る、それがあの方の最期の矜持だというなら、私は命にかけても守り通す。
あの方の事だからもしかするとそんな事気にしていないかもしれないけれど、
それによってあの方が辱められるのは私が許せない。
「この先に行きたければ、私を斃してからお通り下さい」
死人に忠義を尽くすなど、と、貴方は笑いますか、元就様。
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