シリフ霊殿
Schild von Leiden

目指せアイドルマスター
 演技をしてる時の毛利は、綺麗だ。例えそれが根っからの演技だとしても。
「済まぬ……突然、このような事をして……」
 いいいいいいいえ、なんてどもりまくってる相手役のお嬢ちゃん、あれは完璧素に戻ってんな。
「今は、其方に触れておらぬとどうにも不安なのだ」
 まぁ毛利は普段からあんな口調だからなー。見分けつかなくなっても無理無いか。
 ていうか最近あいつの演じる役あの口調のままのが多くなってきてるんだけど、受けてんのかなあの前時代的口調。
 デビュー作の破天荒時代劇が話題だったせいかなぁ。あれキャスト全員地の口調だったよね。
『カーット!お疲れ様でしたー』
 それが終わった途端一気に無表情になるんだから面白い。
 すごく何か言いたそうな相手役の子をあっさり通り抜けてこちらへ戻ってくる。
 勿論労いの言葉一つ無い。可哀想に。
 まぁまぁ毛利君は顔だけは良いからなんてスタッフさん達のフォローが聞こえて来た。
 顔だけ?外面だけの間違いじゃないか?
「我は玉露が良いと申したであろう。使えぬプロデューサーよ」
 というか例え顔が良くてもこんな性格の奴はあたしならごめんだね。
 演技なんてもんじゃないいっそ清々しいくらいの巨大な猫だよ。
「あたしプロデューサーだからマネージャーじゃないから。はい台本練習しといて」
「要らぬ。一度読めば覚える」
「ちょっと人気あるからって調子のってんじゃねーぞコラ誰がお前プロデュースしたと思ってんだ」
「『きゃん!申し訳ありませんお嬢様〜』」
「……」
 よりにもよってギャグパートの台詞で返してきやがった。地味にむかつく。
 声音にはしっかり演技入ってて顔は無表情だから更にむかつく。
「はいその調子で台本読みやりますよ!繰り返すだけでいいから!」
「要らぬと言ったであろう……」
 ぶつぶつ言いながらもあたしが読み始めると一応繰り返してくれる。
「『そのような事も分からぬのか』」
「『そのような事も分からぬのか』」
「『この場は貴様に任せておく』」
「『この場は貴様に任せておく』」
「『らび子だぴょ☆』」
「『らび子だぴょ☆』」
「はいオッケーです。次のスケジュールまで三十分くらいあるから休憩しててねー」


 ちなみに最後のは元親の。
 まさかあんな役やるのかとそわそわしてる元就を見て鬱憤を晴らす用だ。



友人が元就はいおりんっぽいと言ったので
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