シリフ霊殿
Schild von Leiden

銀色の靴
 目を閉じて、踵を三度打ち鳴らせ。
 目を開けばそこは、





「おい」
 目を開けば元就の顔。
「帰らぬのか?」
「んー……元就の生徒会の仕事終わるの待ってるつったじゃんかぁー……」
「そんなもの、とうに片付けたわ」
「へ!?」
 顔を上げれば元就の手にある二人分のカバン。
 ああ、夢か、と思う。
「帰るぞ」
「……うん」
 夢を、見ていたんだ。あたしは。
 夢と一口に言っても色々なのだけれどとりあえずこれは現実のようなので、
 それではこのカバンを手に二人で家路を急ぐ事に致しましょう。
「さっきね、夢見てたんだよ」
 玄関で上履きを履き替えながら言うあたし。
 そうそう、さっきまで、夢の中ではこんな靴履いていなかったんでした。
「そうか」
「え、反応それだけ?
 せめてどんな夢だったかくらい聞こうよ、会話成立しないじゃん」
「聞かなくても其方は勝手に喋るであろう」
「うっわ、かっわいくなー。まあ事実だけどさ」
 あのね。

「あたしらの前世が死ぬ時の夢を見た」

 下駄箱の向こう、校庭の方でセミが鳴いた。
「前世だって確証はないけど、あれはきっと前世だよ!」
 いわゆる過去夢、というやつ。
 既視感を伴う幻想は、得てしてこのような妙な確信をもよおすものなのです。
「元就が武将でさ、あたしがどっかの敵国の忍者なの。女だからくのいち?
 元就は当然あたしの事が邪魔だし、あたしは元就を殺すように命令受けてる訳」
 そして彼は自信たっぷりに策を弄し、彼女はとっときの毒を武器に塗った。
「結果はまあ、よくありがちな相打ちな訳です」
 息絶え絶えな互いの前で、息絶え絶えに互いに笑う。
 死を悟った二人の最後の戯言。
 二人で同時に口を開く。
「もしまた輪廻転生の後に、出会う事があったなら」
 溢れかえる人波の中、互いを見つけ出す事が出来たなら。


 『その時は、友として傍にいてやってもいい』


「だからあたしと元就が今こうしているのも、その時互いを認め合った二人が……」
「帰るぞ」
「ってシカトかよ!ホントにあんた可愛くないなー」
「其方の妄想に一々付き合っていられるか。我は我ぞ」
「……まあそうなんだけどさあ」
「大体何故我が其方の友なのだ」
「え、違うの?」
「……」
「違うの?」
「もうよい」
「えー!」



転生ネタなんでしょうか
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