「貴様、酒は飲むか」
この人が働きのあった者を労うという事自体驚きだった。
仕える前に聞いていた限りでは、とてもそんな事をする人間に思えなかったから。
……まぁ、実際そんな事を言ったら即殺される程度には事実だが。
「飲まぬと答えましたら」
「侍女に餅を用意させてある」
ともあれ、この人はそんな酷い風聞があるにしては意外にも他人を労う。
しかもきっちり褒美を使い分けて。
酒を好む者には酒を、好まぬ者には餅を。
ここで酒の代わりに餅を出す辺りがこの人らしい。
自分が喜ぶものは他人も喜ぶ筈という妙な心理だろうか。
とりあえず、この人が餅好きであるという知識以外に俺の役に立つものは無い。
「では、酒を頂きましょう」
「聞いておいて何だ」
「俺がこちらを取れば、残った餅を元就様が召し上がる事が出来ると思いまして」
「……ふん」
要はこの人が俺を使って戦に勝ち続ければそれで良いのだから。
元就の餅好き設定ってそういえばどこからきてるんだろう