ざっくりと刀を振り下ろしたすぐ脇に、同じような古い傷跡があった。
目の裏の軽い閃光と共に、既視感が確信に変わる。
自分は以前一度この男を斬った。同じように、確かにこの肩口を割った。
「……ふふ」
斬られた男がよろけながら自分を見て、笑う。
気味が悪い。
「やはり貴様は、良いな」
傷口を押さえた指の間から血が溢れていた。
自分としてはかなり深く斬ったつもりなのだが、男が平然と笑っているので致命傷かどうか分からない。
「一度その刀をこの身に受けた時から決めていた」
ずるり、と男が一歩こちらへ歩み寄る。
「再び斬られるのならば貴様に、と」
ずるり、とまた一歩。
足取りが重いのは傷の所為だと思って良いのか。
「他の誰でもこの用は足せぬ。我に傷をつけて良いのは貴様だけぞ」
重そうな膝が不意にがくりと折れた。
支えを求めるように、血に塗れた手がこちらへ向かって伸ばされる。
倒れる間際気味が悪い、と言うと、男は本望だと言って笑った。
珍しく変態度の高い元就様