シリフ霊殿
Schild von Leiden

今この瞬間を生きる
 湯船から上がって直ぐに携帯を手に取った。

「もしもし、私#奈々。今、お風呂場の前に居るの」
『怪談の真似事か?言っておくが怖がってはやれぬぞ』
「もしもし、私#奈々。今、バスタオルが無いの」
『入って十秒でもう上がるのか。早いな』
「シャンプーもリンスもボディソープも無いから上がってきたんだよ何この家!」
『我の家だが』
「そういう事を聞いてるんじゃない!」
『確かまだ石鹸が残っていたと思うのだが……』
「まだって何、まだって!」


 つーか、本当にバスタオル何処?
 乾燥機の中に無いか?
 えっこの一枚だけなのってかカビくさっ!





「……決めた。元就」
 髪から雫をしたたらせながら部屋に戻ると、呑気にも本を読んでいた。
 こら、脱いだ上着をクッション代わりにするんじゃない。
「何だ」
「一緒に暮らそう」
「唐突だな」
「自分の彼氏が腐海の底で孤独死なんて人生最大級の恥ですからね……!」



元就は生活能力なさそうという妄想
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