シリフ霊殿
Schild von Leiden

緑のある生活
「あ゛つーいー……」
 障子を開けっ放して日陰に寝そべって、それでもまだ暑い。
 時々風が吹いてくるのが唯一の救いだ。
「ちょ、元就連れて来てくんない」
 耐え切れなくなって、通りかかった近習を捕まえて頼む。
 耐え切れなくなったというより既におかしくなったのかもしれない。
 頼んでいる内容からして。
「元就様……ですか?」
「うんそう。傍に置いといたら涼しいと思うんだよねー」
 ほら、植物って部屋に置いとくと涼しくなるとか言うじゃん。
 あれですあれ。手近に思いついたのが元就だっただけで。
「お気持ちは分かりますが、その……」
 分かるのか。
 あの戦装束が植物っぽく見えるのはもはや毛利軍の共通事項なのか。
 いや、だろうと思ったから言ったんだけどね。
「今、元就様は……」
「うん?何、日輪浴びてる?」
 だったらしょーがないな、植物に日光は不可欠だ。
「いえ、それは朝の内にお済ませに」
「じゃあ何、水?」
 水ならあれだよ、具足の中に注ぎ込んでやれば良いよ、じょばじょばと。
 根っこ(※足ともいう)からしっかりと吸えるようにさ。
「そうではなく、」
「ああもうじゃあ何なのさー!」
 植物に必要なのは光と水とあと何だっけ。
 精力か。精力なのか。
 汗をかけば涼しくなるとか云々言ってこれこれこうする気か!
 いやあの人に限ってそんな事はないと思うんだけど、
 管理人が夏コミ帰りでヤる気みなぎってるから一応警戒しておかないと



「元就様も暑いと言って部屋で伸びておられまして」
 ちっ、使えん奴め。



植物
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