……あー、あー……これマイク入ってる?
えーマイクテスマイクテス、ただいまマイクのテスト中、テステステス、
本日は晴天なり本日は晴天なり雨天決行槍雨霰、北条のじっちゃん腰痛悪化ー。
うん、よし。
それではこれより『シンデレラ』を開幕致したいと思います。
昔々ある所に、というか中国なんですけれども、シンデレラが住んでいました。
「新弟礼等とはどういう意味だ?」
妙な一発変換せずに分からなければ平仮名にして下さい平仮名に。
独眼竜とか虎の若子みたいな二つ名だと思えばそれほど変じゃないでしょ。
毛利元就、人呼んでシンデレラ。うん、いーじゃん。
もともとシンデレラって本名じゃなくてあだ名だしね。意味なんだっけ、灰かぶり?
「別にこのような妙な二つ名など要らぬのだが……」
はい文句は受け付けません。本編いっきまーす。
シンデレラの肉親は早くに亡くなり、今は継母と継姉がシンデレラの面倒を見ていました。
「ほらほら元就君、兵が消耗しているよ!
それと年貢はまだかい?納めるように言った筈だけれどね」
「……心得た」
継母はシンデレラが父親から受け継いだ水軍が欲しくてたまりませんでしたので、
何とかして取り上げてやろうと、事有る毎にシンデレラを苛めていました。
シンデレラは畜生この仮面舞踏会いつか焼き焦がしてやると思ってはいましたが、
如何せん継母と継姉の強大な軍事力の前には太刀打ち出来る術もなく、
唇を噛んで屈辱を耐え忍びながら日々を過ごしておりました。
そんなある日、シンデレラ達のもとに京から祭りの招待状が届きました。
「君の名を日本中に知らしめるチャンスだよ、秀吉」
「うむ」
継母と継姉はいそいそと支度を始めます。
シンデレラはというと生来の引きこもりと人間嫌いに加え、
あんな老若男女が踊り狂うような馬鹿な所に誰が行くかという一種の偏見と、
そして何より継母に「残っていたまえ。君にはそれがお似合いだ」などと言われてしまったので、
城で一人寂しく日輪を浴びて過ごしておりました。
「おお、日輪よ……」
いつもは継母が鼻で笑うので人目をはばかる日光も、今日は存分に浴びれます。
思う存分日輪に祈りを捧げて、シンデレラはご満悦でした。
「この幸せ……」
しかしそんな幸せも傍から見れば居た堪れない事この上ありません。
特にシンデレラの城のお隣、といっても海の向こうですが、
お隣の鬼ヶ島に住んでいる自称海賊の魔法使いは、殊更そんなシンデレラを哀れんでいました。
そして海賊は得てして人情に厚いもの。
哀れな人間に手を差し伸べずにはいられないのです。
「つー事で、ジャーン!毛利、お前を京の祭りに連れて行ってやるぜ!」
「いらぬ」
しかし当然の事ながらシンデレラは魔法使いの提案を丁重に遠慮します。
自分から避けていたのに、わざわざ連れて行かれるなんてとんでもない。
「即答かよ!折角お前の為に十飛で瀬戸内海越えてきたってのに!」
「というか毎度思うのだが、貴様あの碇槍をいつも何処にひっかけているのだ?」
「まーまー、そういう野暮な突っ込みはお互い言いっこなしだぜ」
遠慮を跳ね除け、魔法使いは懐から魔法のステッキを取り出しました。
最北端を攻めた時に分捕って来たお宝の一つです。
「へへ、憧れだったんだよなぁ魔法少女」
何だかときめいているのは幼少期の名残とでも思っておく事にして、
魔法使いはえいっとステッキを一振りしました。
説明書きには変身は出来ないと書いてありますが、変身以外の事については一切書かれていません。
ましてや使っているのは小さな頃から魔法の存在を一途に信じてきた乙女……失礼、屈強な海の漢です。
ぽんっと可愛らしい音がして、シンデレラの服が第二衣装に変わりました。
「これなら京に行っても変な目で見られねぇだろ」
どうやらオクラ兜の不自然さを綺麗さっぱり忘れているようですが、
確かにこれなら京に行っても綺麗なお貴族様で通るかもしれません。
あくまでも兜を脱げば、ですが。
「後は京までの足が要るな……」
「まさか、あの木騎とやらに乗せていく気ではあるまいな」
この傾国の馬鹿ならやりかねないと、ジト目で魔法使いを睨むシンデレラ。
「まさか、んな訳ねぇだろ」
対する魔法使いは爽やかに笑って言いました。
ひょいっとシンデレラを抱き上げ、
近くにいつの間にか作られていた城らしきものに乗せます。
がくん、と音がしてその城が大きく揺れました。
「滅騎だ」
「今すぐ降ろせ!」
「無茶言うなって、起動したら俺でも手ぇ届かねぇよ」
がくんがくんと不規則に揺れながら、滅騎は京へ向けて歩き始めます。
「あ、そうだ、言い忘れたが毛利」
「何だ」
シンデレラは振り落とされないよう機体にしがみつきながら答えました。
「子の刻……そうだな、暁の九つまでには帰って来いよ」
子の刻、西洋の時刻に直すと日付の変わる午後12時の事です。
「何だ、鬼如きの魔法は精々その程度が限界か?」
言わなきゃいいものを言いたい事は言わずにいられない性質のシンデレラ。
魔法使いは図星とも言えず、こめかみをひくつかせながら笑顔で言い返しました。
「子の刻までに帰って来なかったら、ザビー教に入信届け出すからな」
「……分かった」
サンデーではないシンデレラは真っ青な顔で頷きました。
京では喧嘩祭りの真っ最中。
派手な音楽と共に、都中の人間が踊り狂っています。
その祭りの本部、輪の中心で、大臣は大きな溜め息を吐きました。
帝に縁ある人間だという一人の姫……いや、この場合は王子様か。
王子様が、宮から出て以来くすりとも笑わないのでした。
理由は単純明快、祭りがつまらないからです。
王子様は戦いを見るのが大好きで、これまでも宮に何人もの闘士を呼んで戦わせたりしていました。
幼少の頃から戦いという戦いを見てきているので、並大抵ではつまらないのです。
焦ったのは叔父夫婦から王子様の世話を言いつけられた大臣です。
自分の仲間達を呼んで喧嘩立ち回りなどしてみせますが、王子様は溜め息を吐くばかり。
「け、慶ちゃん……もう俺らあかんわ」
喧嘩慣れした京の暴れ馬が悲鳴を上げるほどの凄まじさ。
それでもまだ王子様は納得しないのです。
「京では喧嘩が多いと聞くから、面白いものも見れるだろうと思っていたのに……」
踊る人々を見ながら、王子様は大きな溜め息を吐きました。
「んな事言ってもなぁ……今のでうちの喧嘩自慢は全部だよ」
「貴方はまだ誰とも戦っていないけれど」
「俺は良いけど、相手がなぁ。俺と満足に戦える相手が居ないと、奈々姫もつまんないだろ」
「貴方、何人か猛者を祭りに招待していたじゃない。誰も来なかったの?」
「いやー来るには来たけどさ……」
大臣はちらりと継母と継姉の方を見てからまた目を逸らしました。
継母と大臣は過去に継姉を巡ってのこれこれこうがあってから仲が悪いのです。
例え王子様を喜ばせるためでも、あれとまともに顔を合わせるなんて真っ平御免。
ごめんねぇ、と一言呟いて、大臣は見なかった振りを決め込みました。
「はぁ……もう本当誰でも良いから強い人いないかしら。そしたら慶次との一騎打ちが見れるのに」
王子様が再び深い溜め息を吐いた時の事です。
わぁっと声がして、踊る人並みが一気に崩れました。
「何だ何だ、喧嘩か?」
大臣が慌てて声のした方に目をやります。
この祭り、本当はもう少しちゃんとした名前があるんでしょうが、別名は前述の通り喧嘩祭り。
祭りで興奮した町人が、他の町人や見物客と喧嘩になる事はしょっちゅうです。
ただ、今回のものは明らかに規模が大きすぎました。
酔っ払いの小競り合いとは到底思えません。
「まぁ……!」
騒ぎのする方を覗き込んだ王子様は顔をほころばせました。
それもその筈、騒ぎの中心ではたった一人の人間が、
数百人に及ぶ町人達を相手に一歩も引かぬ大立ち回りを繰り広げていたのです。
身なりは貴族風ですが、武器を持っている所からして恐らく武士なのでしょう。
何人相手にしたかなどもう数え切れない程なのに、それでも武士の顔には疲れが見えません。
「面白いわ!」
王子様は叫びました。
その顔には、久しく見せる事の無かった笑みが浮かんでいます。
「慶次、あの人をここへ連れて来てよ。貴方と戦わせたら、きっとすごいわ」
「はいはい」
大臣は自分の長剣を抜くと、大立ち回りの中に踏み込んでいきました。
所変わってこちらはシンデレラ、何人目かの町人を自慢の輪刀でのした所です。
「貴様らなど、雑魚の群れよ!」
流石にいささか息が弾んではいますが、へこたれてはいられません。
元々京になど来たかった訳ではありませんが、こうして来てしまったからにはやりたい事がありました。
それは、継母と継姉をこの機に乗じて亡き者にする事。
継母達の保護下に置かれた状態では、シンデレラの家は政治的にも不利でした。
先祖代々の家がいつ潰されて、水軍を取り上げられるか分かりません。
普段は強大な軍に阻まれて手出しが出来ませんが、今なら護衛もろくにつけてはいない筈。
一騎打ちなら、シンデレラにはかなりの自信がありました。
ですが継母達に近付こうとしても、丁度折悪く祭りが一段落した所だったらしく、
おい祭りの邪魔者つまみ出せとばかりに町人達が群がってきます。
「ええい退け!早々に道をあけるが良い!」
「何だあんた、急いでんのかい?」
町人達をおしのけ継母の元へ向かおうとしていたシンデレラの目の前に、
突然大きな刀を持った男が立ちはだかりました。
勿論大臣なのですが、田舎者のシンデレラはそんな事は知りません。
「何者だ」
「いやーさっきから見てたんだけど、あんた強いな」
「……?」
「どうだい、俺といっちょ手合わせしてみちゃくれないかな?」
くれないかな?と言いつつ、男は既に刀を抜いていて有無を言わせない状況です。
「貴様の相手をしている暇など無い。退け」
シンデレラが振り下ろした輪刀を、大臣は無造作に長剣で受けました。
その一合で、シンデレラと大臣は互いの力量が相当なものであると悟ります。
「……あんた、ただの邪魔者じゃないな」
大臣が刀を下ろしながら呟きました。
「いかにも。我は祭りの邪魔をしに来た訳では無い。故に貴様らに邪魔される理由も無い」
分かったなら退け、とシンデレラも輪刀を下ろしながら言います。
「そういう訳にもいかねえんだ。こっちも訳ありでね」
「訳……?」
「ちょっとくらいは相手してもらう、ぜっ!」
今度は大臣の方が長剣を振り回して攻めに転じます。
ここで退く訳にもいかず、シンデレラも剣を受け止め反撃します。
二人の打ち合いは長い間続きました。
「あんた、ほんと中々やるな」
数十合の打ち合いの後、大臣がいったん剣を引きました。
「実は俺はある人に頼まれて、打ち合いの相手を探してたんだ。
あんたならきっと不足ないぜ」
「我にはそのような時間は無い」
時間、と言った所でシンデレラは己に時間制限があった事を思い出しました。
はっとして空を見ると、もう夜は更けかかっています。
「慶次!」
一連の打ち合いを見ていた王子様が興奮して駆け寄ってきます。
「そちらの貴方も、とても強いのね。お名前は?何処からいらっしゃったの?」
皇族直々のお言葉とあれば、天皇家の力の弱まった今のご時世でも有難いもの。
普通ならば頭を下げて礼をとる程ですが、生憎シンデレラは王子様の素性を知りません。
そして何より焦っていました。
「其方、今は何刻だ?」
「え?」
いきなり声をかけられて大臣は妙な声をあげました。
「早う答えよ」
「えーいやそんな正確には……大体夜の四つってとこじゃないか?」
夜の四つは亥の刻、大体夜の10時頃です。
来る時にかかった時間から計算しても間に合うかどうか分かりません。
「迂闊……」
時の経つのも忘れていたシンデレラは慌てて踵を返します。
が、やっと見つけた対戦相手を大臣が容易に逃がす筈がありません。
「おいちょっと待てよ」
「ぐっ……!」
丁度良い位置にシンデレラの被っていた兜があったので、大臣はとりあえずそれを引っ掴みました。
兜というのは顎紐で固定しているものなので、掴まれれば当然の事ながらシンデレラの首が絞まります。
「は、放せ!」
「やだよ。言ったろ、訳ありだって」
「こちらにも訳はある!我には時間が……」
このまま掴まれていると、帰れない上に自分が窒息死しかねません。
仕方なくシンデレラは咄嗟に兜の顎紐を解き、一瞬の隙をついて逃げ出しました。
「……逃げられちまったな」
「逃がしはしないわ」
「え?」
「折角見つけた理想の対戦相手、それを正式な試合もせず逃げるなんて……」
……許さないわ。
王子様の口元に妙な笑みが浮かびました。
「おー帰って来たか」
間一髪の所で城に駆け込んだシンデレラ。
魔法使いはゆうゆうと入信届けを書いている最中でした。
「あれ、お前オクラどうした?何か背が縮んだみたいに見えるぜ」
「焼き焦がすぞ貴様。それよりさっさとその紙を捨てろ」
「えー折角上手に書けたのにー」
魔法使いは渋々入信届けの名前の欄を『島津義弘』に書き換えました。
折角上手に書けた書類を破るのは勿体無かったようです。
さて、次の日の朝の事。
日輪を浴びているシンデレラのもとに、足音も高く継母がやってきました。
「元就君、あれは一体どういう事なのかな?」
「……何の事だ」
シンデレラの肩が一瞬びくりと跳ねました。
「あんな派手な格好であんな真似をしておいて、まさか気付かれていないとでも?」
「うっ……」
言われてみればその通りでした。
そもそもあんな祭りの場に貴族が居る事自体おかしいし、
その上その格好で暴れまわったとあれば目立たない訳が無いのです。
何よりあんな形の兜、そうはありません。見る人が見れば一発で分かるでしょう。
つうっとシンデレラの背を嫌な汗が伝いました。
「さて、教えてもらおうか元就君。留守番を命じられている筈の君が何故あんな所に居たのか」
継母がずいとシンデレラの方に身を乗り出した時です。
「半兵衛、客が来ているぞ」
実は今までまともな台詞が無かった継姉が継母に声をかけました。
「誰だい?僕は今忙しいんだ、手短に頼むよ」
文句を言いつつも継母はそちらに向かいます。
門の前には、忍びの装束を着た男が一人立っていました。
「やー忙しい所すいませんねどーも」
「全くだよ。用件は何だい?」
「こないだうちのお館様が上洛した時に預かったんですけどね」
忍びは何処にしまっていたのか大きな風呂敷を取り出し、包みを解いて中身を見せました。
「どうやら最近、これの持ち主を探してる人が居るらしくて」
中から出てきたのはまごう事無き、シンデレラがあの場に置いてきた兜です。
「そうか、君朝から何か背が縮んだというかアイデンティティが失せたと思ってたら」
「貴様までそれを言うか……」
継母の呟きはとりあえず横に置いておくとして。
「……これは、毛利のものではないのか?」
先刻の会話の内容など何も知らない継姉が首を傾げながら言いました。
「え、何々知ってる人?」
「知っているも何も、今そこに」
忍びの視線がばちりとシンデレラを捉えました。
知らぬ存ぜぬを決め込むつもりだったシンデレラは青ざめましたが、
持ち主を探し当てる事の出来た忍びは反対に顔をほころばせました。
「えっ嘘マジで?マジでアンタなの?」
詰め寄られて今更嘘ですとは言えない状況です。
「お、見つかったかい?」
しかも外で話を聞いていたらしい大臣まで乱入して来ました。
肩の上で猿が鳴くので真面目な雰囲気が台無しでしたがまぁそこはそれ。
「……仕方があるまい」
覚悟を決めて、シンデレラは昨夜魔法使いに出して貰った衣装を出して来ました。
水干に袖を通し、袴と具足を履き替え、口元を布で覆うと、
成程確かにあの時大臣と刃を交えた武士です。
「確かに、その兜は我のものだ」
シンデレラはそう言うと、風呂敷の上に置いてあった兜を自分の頭に被りました。
「そうそう、あんただよあんた!間違いない!」
「このタイミングで言うな!」
どうやらシンデレラを兜抜きで認識してくれているのは魔法使いぐらいのようです。
ただ一人祭りの場に居合わせなかった忍びだけが首を傾げていてくれました。
「それで、我に何の用だ」
「いやーそれがあんたが逃げちゃってからうちの姫様がそりゃもう荒れちゃってさ」
大臣は頭を掻きながら言いました。
「何に替えてでもあんたの事探し出せって、触れが回ったんだよ」
「そうそう、この兜の持ち主を見つけたら即刻拉致って来いって」
「は……?」
ひょいっと、昨夜に引き続き再びシンデレラの身体が抱き上げられました。
今度抱き上げたのは魔法使いではなく忍びです。
そのままタイミング良く飛んで来た烏に掴まり、京へ向けて飛んでいく忍び。
降ろせと言う訳にもいかず、シンデレラは再び真っ青な顔で京へ向かいました。
「姫さん、連れてきたよ」
「待っていたわ」
昼間の京は祭りも一段落して、昨夜の騒ぎが嘘のように静まり返っていました。
ようやく烏から降ろされたシンデレラを、妙な笑みのままの王子様が出迎えます。
忍びはシンデレラを降ろすとすぐ何処かへ消えてしまいましたので、
京についての土地勘もないシンデレラに逃げ道はありません。
「ああ……」
ずい、と一歩シンデレラの方に近付く王子様。
反射的にシンデレラは一歩後ろに退きます。
更に進む王子様。更に退くシンデレラ。
延々と続く追いかけっこは、シンデレラの背に塀が当たって終わりを告げました。
あの笑みからして絶対碌な事を企んでいない、と怯えていたシンデレラでしたが、
しかし、事態はシンデレラの計算とはちょっと違った方向にずれたようです。
「お会いしたかった……」
きゅうと可愛い効果音付きで、王子様はシンデレラに抱きつきました。
シンデレラはといえば、そういえば異性と接した経験が殆どありません。
計算してないぞ、と一言呟いたまま固まってしまいました。
「この細くも鍛え上げられた身体、卓越した武術、まさに戦う男の理想形態だわ!」
まぁ、王子様はそういう意味合いで抱きついたんじゃないと思いますが。
硬直覚めやらぬシンデレラに向かって、王子様は笑顔で言いました。
「私、貴方を身請けしてあげる。不自由があれば何だって私が何とかしてあげるから」
「身請……?」
王子様王子様、身請けは遊女に使う言葉ですよ。
まぁ世間知らずでいらっしゃるのでシンデレラにはその辺許容してもらうとして、
簡単に言うと「私がバックアップしてあげる」と言ってくれたという事です。
ただの女性ならばバックアップなど何の役にも立たない所ですが、
先刻忍びや大臣はこの人間を「姫様」と呼んでいました。
そしてここは京の都。やんごとなき方々に縁ある人間と思って良いでしょう。
継母と継姉に睨まれピンチになっていたシンデレラにはまさに希望の光でした。
表現が気に入らなければ雲間の日輪と言い換えてもよろしいですが、結構ですかそうですか。
「……何が望みだ」
シンデレラは王子様に向かって声をかけました。
王子様はにっこりと満面の笑みを向けて答えます。
「貴方が、私の為に戦ってくれたならそれで良いわ」
……それから、少しだけ時間が流れました。
天皇家のバックアップを受けたシンデレラは継母達から独立し、
現在は中国の覇者として思う存分日輪を浴びられる生活を取り戻しました。
そして何故か王子様はシンデレラの城にいついています。
普段は大臣や魔法使いなど各地の猛者を城に呼んで練習試合を行い、
いざ戦ともなれば忍びに安全な覗き場所を確保させて、そこからシンデレラの勇姿を眺めるのでした。
それをシンデレラが不快に思っているかどうかは、まぁ言うまでもないでしょう。
めでたしめでたし。
書いてる時はすごく楽しかった