「あ、不良みっけ」
昼休み、昼寝をしようと屋上に上ったら不良がいた。
教師には褒められこそすれ一回だって叱られた事の無い不良。
「何の事だ」
言いはするけれど、右手でくゆらせている煙草を隠そうともしていない。
成程彼の制服からよくミントの強い匂いがするのはこういう訳か。
「いいのかなー生徒会長サマが煙草なんて吸って」
「そういう貴様は制服を崩して着るなと何度言えば分かる」
「あたしは校則は死ぬほど破ってるけど法律破った事は無いもんねー」
「ふん」
からかうつもりで傍に寄ると、口封じだとでも言いたげに唇が塞がれた。
この生徒会長、実は案外手が早い。
「……苦い」
「そうか」
「煙草臭い」
「まあ、当然であろうな」
「せめてガムか何か噛んでからにして欲しかったよ」
というか、あたしにも後でそのミントの匂い消し頂戴ね。
この男と同じ匂いをさせながら校舎に戻るのかと思うとぞっとしないけど。
「其方はもう少し遊び慣れたものと思っていたが」
「あたしもあんたはもう少し奥手だと思ってたよ」
元就は何も言わずに煙草を手すりに押し付けて消した。
「戻るぞ」
「証拠隠滅くらいしていきましょうよ毛利会長ー」
「真面目な事だな」
不良が皮肉気に笑う。
「『不良』如き、貴様が一々気に留める程の事でもあるまい」
「そりゃあ、あんたの部下だから」
真面目なんですよ。あんたの外面と一緒でね。
同じような笑顔を作って言い返すともう一度苦い口付けをもらった。
無表情で煙草吸うのなんとなく萌え