「良い格好ですねえ、元就様」
地に伏した彼を見下ろして言うと、鋭い眼光で睨み付けてくる。
あんなに恐ろしかったこの人も、上から見るとやっぱり少しは違って見えるのか。
「そんな無様な姿、兵達が見たらどう思うんでしょう」
「! ま、まさか」
「ええ、そのまさかのつもりです」
私はゆっくりと彼に背を向け、顔だけで振り返って言う。
「ここは偶然人が通っていないだけのただの廊下。人払いも何もしていない筈。
私が一声上げれば、すぐにも誰かがやってくるでしょうね」
「貴様……っ!」
「うふふ」
精一杯の彼の強がりにも耳を貸さずに、息を吸い人を呼ぶ準備を整える。
「全ては貴方が愚かなのがいけないんですよ、元就様」
そう、これは全て彼の自業自得。私は何も悪くない。
皆に笑われて、少しは頭を冷やせば良いんだ。
(そこは先刻油拭きしたばっかだから滑りますよって言ったのに)
ろくに聞かずに足袋でずかずか歩いた貴方が悪い。
転んで当然なんだ、そんなの。
(そもそも転んだ格好のまま呆然としてないでとっとと起き上がれば良い話。)
元就様を踏みたい週間