シリフ霊殿
Schild von Leiden

小一時間ほど問い詰める
 だって二人暮しだもの。
 互いの私物がちょっとくらい混ざったって仕方が無いだろうとは思っている。
 流石にあたしだって男物の下着間違ってつけるほど馬鹿じゃないし。
 向こうだって当然間違ってあたしの下着履くようなヘマはやらないだろうし。
 だから混ざるとしても精々細々とした、混ざっても構わない程度のもんだろう、と。
 要するに高を括ってた訳だ。
「チカぁぁぁぁ!!」
「何だぁ?どうしたってんだいきなり」
「またあたしのシャンプー勝手に使ったでしょ!後ビタミン剤とか日焼け止めとかその他諸々!」
「あ、悪ぃ。駄目だったか」
「駄目ってゆーか……」
 いやほらだって……ねぇ?
 隣のトニックシャンプーと間違えたというならまだ分かる。
 それなら流石にあたしも許容しようじゃないか。
 しかしこの男はその後髪をきっちりトリートメント(勿論あたしのだ)した挙句、
 風呂上りには化粧水・クリーム・ビタミン剤でお肌のケアも欠かさない。
 部屋は男の部屋にしてはきっちり片付いて芳香剤まで置いてあるし、
 出掛けるとなればあたしより先に日焼け止めに手を伸ばす始末だ。(なんでも日に焼けやすい体質らしい)
 ここまで来ると怒りを通り越して感動を覚えてくる。
 高校時代不良で鳴らし、今でも近所の不良にアニキと慕われるような、
 このゴツイ男の何処にこんな細やかな神経が残ってるんだろう。
「……つーかさぁ」
「あ?」
「あたしのわざわざ使うくらいなら自分の分買ってくれば良いじゃん?」
 買って来たばかりなのにすごい勢いで軽くなるボトルを手に溜め息を吐くあたし。
 チカは床にのの字を書きながらだってよぉ、と言い返した。
「……恥ずかしいだろ。男が女モン買って来るとか」
「はぁ?今更何言ってんのこの姫」
「姫言うなッ!」
 ああ、全くもって今更だ。
 買い物に付き合わせればあたしより熱心に化粧品を吟味し、
 あたしより目聡く可愛い服を見つけ、あたしよりぬいぐるみに目を輝かせ、
 あたしより洋菓子のショーケースに釘付けになり、
 あれじゃああたし何でそんな今更の事に腹立ててるんだろう。疲れてきた。
「……ようするにあたしと二人で買い物行って、あんたが品物選んで、
 あたしがあんたのお金持ってレジまで買いに行けば良いんでしょ?」
「おお、お前頭良いな!」
「……」
 ちょ、もうこいつ殴って良いかな。



ごつい姫若子萌え
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