「……そういえば今日の軍議録を秀吉様に提出しなければ」
すっかり寛ぐ準備をして炬燵に入り、二人して蜜柑を剥き掛けた所で三成様が唐突にそんな事を言った。
「あらそうなんですかー、行ってらっしゃーい」
当然あたしは蜜柑を剥きながらそう返事する。
「……」
「……」
「命令だ、俺の代理として行って来い」
ほら来た。
「あーはい、じゃあこの蜜柑の筋取り終わってから行きますねー」
何処かでこの筋が高血圧に聞くなんて話も聞いたけど、嫌なもんは嫌だもんね。
一房食べる毎にちまちま取ってると食べた気がしないので、
剥き終わった房を炬燵の上に並べてせっせと一個分全部剥きに掛かっている。
「……」
ひょいぱく。
「あっ……あー三成様あたしの蜜柑食べましたねー!」
「何の事だ」
口もぐもぐさせながら言わないで下さいばれてますからっ!
「もー怒った、絶対秀吉様の所行ってあげませんからね」
「貴様、俺の命に背く気か」
「ふーんだ、何と言っても行きませんから。
どーせ最後に怒られるのは三成様ですもんねー自業自得ですもんねー」
食べ物の恨みは怖いんですからね。
全く三成様の所為でもう一回丸ごと剥き直す羽目に……
「……」
「これはあたしのですからねっ!」
「ふん」
「そんな虎視眈々と狙ってても絶対絶対あげませんからねっ!」
・・・半刻後。
「丁度良かった左近、これを秀吉様へ頼む」
「・・・ちっとばかし黄色い染みがついてる気がするんですが」
「気のせいだ」
「というかお二方共顔黄色いですよ食べ過ぎです」
左近は苦労人