シリフ霊殿
Schild von Leiden

とれたてみったん
 四国はただいま蜜柑の収穫期真っ最中です。
「あ、皆ーそこ採り終わったら休憩ね!」
「うぃっすアネゴ!」
 アネゴじゃねっつの。
 長曾我部元親はあたしの実兄だからアニキと呼ぶのはやぶさかでないけれども、
 だからといってアンタらを弟に持った覚えは無い。
 まぁ言うだけ無駄だから最近は諦めてるんだけどさ。
 自分の割り当てられてる場所の収穫を大体終えて、汗を拭いつつ後ろを振り向く。
 広げられた布の上に山と盛り上がった蜜柑。
 今年は豊作だったし、これで当分の間四国の民と私の甘味を賄えるだろう。
 今度あの詭計智将が遊びに来た時これ見よがしに目の前で食べてやろう。
 四国のものを田舎臭いと言って馬鹿にする奴だ、悔しがるに違いないけけけ。
 ……しかし実際これ数えたらどれくらいあるんだろうな。
 ちょっとやってみるか、と近付いてみた時、不意に山の一角がぼろろろと崩れた。
「わ、やば、地面に……」
「おや、元親公の妹君ではありませんか」

 ………………



「いやー兄貴ー蜜柑の山の中から不審者がー!」
 ずるりと山の中から這い出てきた銀髪を引っ掴んで蜜柑畑を走る。
 勿論掴んでいるモノの事は意に介していないというか視界に入れていないので、
 凸凹の地面が顔面おろし器と化しているがまぁ気にする程の事でもあるまい。
「はぁ……はぁ……兄貴、どこ……?あたし一人じゃ怖いよ……」
「人一人引きずりながら随分と可愛らしい演技ですねぇ」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
「失礼ですね、貴方がした事でしょう」
 うんごめん、まさかそこまで手酷く鼻がすりむけるとは思ってなかったんだ。
「つーか何しに来たんだあんた!」
「獲物を求めて彷徨っていたら、甘い香りがしてきましたもので……」
「それで何で蜜柑の山の中に突っ込むんだ」
 確かに香りは堪能できるだろうけど……あたしこいつの考える事分からない。
「それに、良い獲物も見つかりましたもので……ね?」
 べろり、と明智があたしを見ながら舌なめずりをする。



「兄貴ー蜜柑の山から不審者が出て来たー」
「ああ痛い痛い、貴方見かけによらず酷い事をしますねぇ」
「喧しい黙れこの変態」
 とりあえず兄貴を見つけるまで顔面おろし続行。



友人からこのタイトルで書けという指令を受けて
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