シリフ霊殿
Schild von Leiden

螺旋の竜(仮)
 扉を開けるとそこはお殿様の控え室でした。
 いやお殿様は控えたりしないから実際は控え室って言うべきじゃないんだけど、
 とにかく居間に入った瞬間飛び込んできた映像を見て、真っ先にそう思った。
 人間混乱すると何するか判らないね。
 ほらよく地震で一番怖いのは大勢の人間がパニック起こす事ですとか言うじゃん。
 最悪命に関わる事が判ってて、それでも混乱して変な行動起こしちゃうんだよ。
 きっと何とかしようと思って何とか出来るもんじゃないんだ。
「テメェ俺の顔を見るなり扉閉めるたぁ良い度胸じゃねェか……girl?」

 だからそれもパニック状態の本能の産物って事で見逃してやって下さい、お殿様。



 大体何でうちの居間にお殿様が居座ってるんですか。
 それもチョンマゲでヒカエオロウなんて言ったりは間違ってもしそうにない、
 どっちかっていうとむしろヤンキーか族の頭領みたいな感じの、
 でもしっかり腰に刀さげて着流し姿で煙管ふかしてるお殿様。
 (ていうかそんな六本もどうやって扱うのか是非とも伺いたい)
 一目でお殿様だと看破出来た自分を褒めてやりたい位だコノヤロウ。
「気がついたらここにいた」
 簡潔かつ有りがちかつあんまり参考にはならない返答をありがとうございます。
 とりあえずここまで健気にも状況を理解しようと頑張ったあたしに、
 ただ一時の現実逃避をお許し下さいお願いしますいやマジで。
「オイ、自分から聞いといて何やってんだ」
「ぶっ!ふぉげふげほごほがはげへごほ何すんですかあんた!」
 許してもらえなかった。
 ていうか煙管の煙を顔面に向けて吐きつけるのは立派な嫌がらせだと思います。
 コンビニの前に座ってる不良と同じ事やってるよあんた!
「ていうか早く帰ってくださいよ。女一人暮らしに男の人混ぜるなんてなんかヤですから」
 家族が留守で女子高生の一人暮らしにイケメンが居候なんて漫画みたいだし。
「いや、戻り方判らねえしな」
「うっわーそんなお約束な」
「つー訳でしばらく世話になるぜ」
「うっわーそんなお約束な!」



一切続きません
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