「下手くそ」
即答するつもりは勿論なかった、(俺だってそのくらいの良心はあるっつの!)
初めてにしちゃ上々だとか、まァこんなもんだろとか、
少なくとも彼女が傷つかない程度の言葉を発してやるつもりだったのに。
「これ、本当にpuddingか?」
スプーンで切ったプリンの断面を見た瞬間にそんな予定は露と消えた。
(一時期流行らなかったか、こんな形状の空気入りチョコ)
「プリンだよ!政宗から教えてもらった通りに作ったもん!」
「俺はここまで見事に素が立つような作り方を教えた覚えはねえ」
どうやったらここまで大量に気泡を発生させられるものか、逆に聞いてみたい。
スプーンで掬い上げられたまま放置されていた一口をとりあえず口に運んでみる。
味自体は、悪くない。
悪くは無いのだけれど、やはり食べる際の食感の奇妙さの方が勝ってしまう。
「不味くはねえけど……やっぱ次はもう少しこの泡減らせ。気になるから」
「……次っていつ」
「Ah?本番に決まってんだろ。自信ねえならもう一回ぐらいは付き合ってやるぜ」
良い人ぶって言ってみる。
言ってから後悔した。
「……だってお前、いちいち言い方回りくど過ぎんだろ」
好きな人がいると聞いたから。何か作ってあげたいと聞いたから。
内心嫉妬で燃えそうな気持ちだったのに。
「何だよ……俺相手にすんならもっとstraightに来いよ……」
呟いても、答える相手はもはやここにはいない。
もう目とか合わせらんねぇかも、奇妙な食感のプリンを食べ続けながら思った。
今ならもっと品のないネタにしてただろうなと思うとこの頃は純粋でした