シリフ霊殿
Schild von Leiden

花と言の葉1
 じゃり、とコンクリートを踏む音がして眼を開ける。
 思った通り、いつもの顔が寝転がった自分を覗き込んでいた。
「やあ」
 とりあえず挨拶。
 彼女は答えるようにくすり、と微笑った。
「またやるの?」
 問うと、にこりと笑って手にしたナイフを振り上げてきた。
 雲雀はそれを寝転がったままトンファーで受ける。
 溜息ひとつ、跳ね起きて。
「仕方ないなぁ」
 その眼に宿るのは殺意でも狂気でもなく、ただの無垢なる喜び。
 まるで出来たばかりの友達の様な、買ったばかりの玩具の様な、
 そんな戯れ合いの様な感覚で、彼と彼女は刃を交える。



 彼女が何処から来るのか雲雀は知らない。
 それでも屋上の重い扉を音一つたてずに開ける事が出来るので
 (或いは開ける必要すら無いのかもしれない)
 本当はこんな所で自分と遊んでいるべき存在ではないのだろう、と、思う。
 確証は無いけれど、多分、きっと。
 君は誰、などという言葉を発した瞬間にいなくなってしまいそうな気もする。
「また、来る?」
 だから、いつもこの一言だけ。
 彼女が頷くのを確認してから、雲雀はもう一度温いコンクリートの上に転がった。
 自分が何の目的もなくここに通い詰めているのも、多分きっともしかしたら(確証は無いけれど)



個人的には気に入っている謎系ヒロイン
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