シリフ霊殿
Schild von Leiden

05.閑話・藤代嘆
「これを探してたの?」
 試薬の瓶を持って来たのは、普段滅多に研究室を訪れない嘆だった。
「嘆。君が持ち場を離れるなんて珍しいね」
「廊下に転がってたから、誰かが態々『外』から持ってきたんだろうと思って」
「ああ、舟に頼んでいたんだ」
 有難う、と嘆の頭を撫でてやった所で、ふとおかしな点に気付いた。
「見つけたのは瓶だけかい?舟は?」
「知らない。血の臭いがしたから、戦闘はあったんだと思うけど」
 戦闘そのものは、嘆は見ていないという。無理も無い、殆どの時間を図書室で資料の整理をして過ごす嘆の事だ。とりあえずもう一度労ってやって、図書館に帰す。

「……さて、血の臭いで追えると良いのだがね」



もうちょっと長い話を書きたかった嘆
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