シリフ霊殿
Schild von Leiden

そして今日も
 人々の多くは変わりなく続く日々に安堵感を覚える。
 日本人は殊の外排他的だから、特に。
 その中でもあたしは特に。
 朝起きて、学校に行って、遊んで、食べて、お風呂入って、寝る。
 そんな変わりなく続く日々が幸せで、快かった。

 けれど続く事が不快である事もあるのだと、最近知った。
「何であんた、ここに居んの」
「何でって、昨日と同じ理由だけど」
 例えばそう、今現在あたしの目の前で嘘臭い笑いを浮かべているこの男なんか。
「#奈々と一緒に帰ろうと思って」



 引退するまではテニス部エースだったというこの男と、別れ道まで同じ道を帰る。
 男はまるでお嬢様とセバスチャンの如く自然にあたしのカバンを持ってくれる。
 何か話をする訳でもなく終始無言なのに、男はとても幸せそうに微笑んでいる。
 嘘臭い笑いの癖にこういう時だけ素に戻るようで、それが毎度不思議だ。
 そして道が分かれる所で彼はあたしにカバンを返し、別の道を歩いて行く。
 夏の大会が終わってからこっち、こんな日がずっと続いている。
 日々同じ事が続くのが好きな筈のあたしが、これだけは酷く不快だ。

「何であたしと一緒に帰ろうとする訳?」
 だから今日、あたしは夏の大会が終わってからこっち、初めてこの男と帰り道で話をした。
「迷惑だった?」
 こんな台詞を吐きながら笑顔を崩さないこの男が嫌いだ。
「迷惑だからこういう事言ってるんだとか考えないかな」
「迷惑と思われないようになるのが、目下の僕の目標だから」
「ああそ。目標は志高く持って何ぼだから、まぁ、頑張って」
「励ましの言葉ありがとう。頑張るよ」
「あー、うん」
 別に励ましたつもりじゃなかったんだけど。
 まぁいいか。もうこいつの事を考えるのも面倒臭い。



「明日ね、僕一緒に帰れないんだ。部活で3年生追い出し会っていうのがあって」
「へーそう」
 友達に約束をすっぽかされた時のような気分になった。
 腹が立つので出来るだけこの男の顔を見ないように心がける。
 顔を覗き込んだが最後胸倉掴んでぶん殴りそうだった。
「僕が居ないからって、寂しがらないでね」
「あーはいはい」
 どうして否定しなかったのか、家に帰ってから首を傾げた。
 お陰で風呂に入るのが30分遅れた。



多分ATVプレイしてたんだと思います。略称これで合ってるかなあ
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