シリフ霊殿
Schild von Leiden

子機は痛い
「……来ない、なぁ」
 ベッドに寝転がり、彼女がくれたアダージョのLPを聴きながら携帯を見つめる。
 部活を引退してからというもの、これが僕の日課……いや、週課になっていた。
 毎週日曜になると、僕は電話がかかってくるまでベッドから起き上がれなくなる。
 待っているのは、彼女からの電話。
 今年になって初めてテニスを始めて、初めてミクスドを組んで、初めて僕のパートナーになった彼女。
 休日練習に誘われるのを心待ちにしている事に気付いたのは、最近だけれど。



「周助ー電話よー」
「あたっ!」
 ベッドにうつ伏せた頭に、いきなり電話の子機が降って来る。
「ちょっと姉さん!」
「電話よ。あんたの後輩から」
「そうじゃなくてさ、」
「日曜になる度にそうしてボーっとしてるんだもの。活入れてあげたのよ」
「……」
 確かにボーっとしてるのは認めるけどさ。
 投げつける事ないじゃないか。
「大体私より先に彼女作っちゃった時点で腹立つんだから」
「か、彼女じゃないよ!」
「顔真っ赤にして何言ってるのよ。それより早く出てあげなさい」
「……うん」
 っていうか、それじゃただの八つ当たりみたいだよ、姉さん。

 自分でも分かるくらいドキドキしながら保留ボタンを押す。
 きっと姉さんに彼女だなんて言われたせいだ。
「僕だけど」
 声が震えてるの、ばれてないかな。
『あっ、先輩ですか?良かったー!すいません携帯うっかり壊しちゃって、
 連絡網で自宅の番号調べたんですけどご迷惑じゃありませんでしたか?』
「構わないよ、大丈夫」
 ちょっと頭が痛いけど。
「それで、どうしたの?」
『ええとですね、よろしければ今日一緒に練習しませんか?』
「喜んで」



S&W2しかやってないんですけど、十分乙女ゲーだったのでこれでお腹いっぱいです
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