待っていたよ、お嬢様。
君も仮装してるんだね。
僕かい?僕も勿論してるよ。
服が変わらないから分かり辛いけれど、ほら、天使。分かるかな?
しかし、背中の羽根と頭の輪だけだとどうも天使というより死人みたいで嫌だね。
文句を言ったら、今にも死人になりそうだから丁度良いだろうって。
失礼にも程があるね、全く。
お嬢様のそれは猫娘かな?可愛いね。
取りたいのかい?お嬢様がどうしてもというなら止めないけれど、
でも、知っているかな?
ハロウィンというのはそもそも古代ケルト民族の祭りがキリスト教に伝わったもので、
日本で言えばお盆か大晦日にでもあたる行事なんだ。
ケルト人にとって10月31日は一年の終わりの日であり、
この日には死者の霊や魔性の者達が家々を尋ねて回ると信じられていた。
つまり、それらから自分の身を守る為の仮装だ。
そう思うと、下らない仮装にも価値を見出せるようになるね。
どうだい、それでも外すのかい?
僕としては折角お嬢様に似合っているんだから、
そのままでいてもう少し君の執事達の目を楽しませて欲しい所だけれど。
……ふふ、有難う。
それじゃあそろそろお茶にしようか。
元就君を呼んでこよう。お嬢様は少しここで待っていてくれたまえ。
03.天使