群れを去った今でも、遠吠えをすればかつての仲間達は自分を慕って集まってくれる。
例え自分達には一切関係の無い事でも、己の主の為なのだと言えば喜んで力を貸してくれる。
一度忠誠を誓った者にはとことんまでついて来てくれるという事なのだろうか。
それならば自分は間違いなくこの一族の者だ、と幸村は苦笑した。
「幸村の若はやはり、我らの元には戻ってこないのでございますな」
群れを抜けた長に代わって頭となった狼が残念そうに鼻を鳴らした。
「うむ!俺は主殿にお仕えすると決めたのだ!」
己が妖になる事が出来たのは、偶然それだけの齢を生き抜く事が出来たからだ。
元就のように長寿の多い種族であった訳でも、
他の式神のように生まれながらにして妖であった訳でも無い。
故に獣の世界にはもう居るべきではない、と思っている。
産んでくれた親もこの世になく、帰るべき巣さえも無い。
ただ、あの屋敷に帰れば主が出迎えてくれる。自分の為に働いた幸村を労ってくれる。
それが嬉しかった、本当にそれだけだった。
自分の還るべき家