四月一日。ぶっちゃけ春休み中。
まぁ新入生は入学の準備やらで色々忙しいだろうけどね。
先月卒業していったB組の面々もそれは例外じゃないだろう。
きっと今頃皆してあわあわと忙しなくしている筈だ。
あたしへの嘘を考えるのに。
いやなに、こういう行事系は欠かさない連中だからね。
彼らの事だからまた朝起きたら顔を覗き込んでるとか考えたけど、今回はそれは無かった。
まぁ、態々うちまで来たら嘘吐こうとしてるのばればれだもんね。
きゅおんきゅおん、とメールの着信音。
ぱかっと開くとメールがずらり。
何だこの示し合わせたような送信時刻は。本当に示し合わせてるのかもしれない。
一個だけ嘘とか、逆に一個だけ本当が混ざってるとか。
或いはそういう心理的効果を狙ってるとか。
とりあえず読んでみよう。一通目は元親から。
『差出人:元親 本文:俺は海の男になる旅に出る!』
……しょっぱなから反応に困るメールだなこれ。
行ってらっしゃいと言えば良いのか行かないでーと言えば言いのか、
それとも斜め上に魚群探知機は秋葉原に売ってますよとか言えば良いのか。
ゴムゴムの実でも食べましたかでいいや。はい返信は保留にして次ー
『差出人:かすが 本文:謙信様の性別が判明した』
え、謙信様の性別はけんしんさまだろ常考。
『差出人:小太郎 本文:(;・□・)』
ええと、とりあえず何か大変だよー的な事を言いたいのは分かるよ、小太郎。
返信も何か顔文字で返すべきかなこれは。
『差出人:武蔵 本文:おれさまさいきょう』
うん知ってる。というかこれエイプリルフール関係ないよね。
『差出人:佐助 本文:花嫁修業始めました☆』
どうしようこれほんとどうしよう。開き直っちゃったあのオカン。
何か割烹着着てる写真まで添付されてるし。嘘だとしてもここまでやるか普通。
……まぁあれだ、本当だったらあたしが嫁に貰ってやろうそうしよう。
『差出人:家康 本文:忠勝が壊れた!』
これもどうしようかなぁ。修理にはやっぱハロとカレルが要るかなぁ。
それともバックアップデータ再インストールかなぁ。切り離しておかないと。
まさかトライアルシステム……はい次。
『差出人:半兵衛 本文:秀吉って実は猿の惑星の王だったんだ』
何でお前まで混ざってんの半兵衛。
というか普段あたしが豊臣先生で猿ネタやると怒り狂う癖に。
『差出人:元就 本文:おもちちゃん』
この子はもう……多分とっさに嘘が出て来なかったんだろうな。
お坊ちゃん育ちな上にアドリブに弱い子だから。
『差出人:幸村 本文:先生の家の近くのスーパーで団子が安売りでござる』
こいつもまた反応のしにくいものを……本当だったらどうするんだこれ。
それとも態々安売りして無いかどうか調べに行ったんだろうか。
……有り得るな。団子だし。
『差出人:慶次 本文:彼女出来ました!』
本当だったら嬉しいんだけどなぁ。多分嘘だよねこれ。
きゅおんきゅおん。
そしてあたしが全員分のメールを読んだのを見計らったかのようにまた着信。
『差出人:政宗 本文:April Fool!!』
成程、組織的犯行って事か。
全部のメールにもう一回ずつ目を通して、ふぅっと大きく息を吐く。
まさか全部スルーするなんて訳にもいかないし、一部にしか返信しないのも不公平だ。絶対後で苦情が来る。
かといって一人一人にぽちぽちやってる時間も無い。
忘れてる人が若干名居るかもしれないけど教師も新学期は忙しいんだよ。
……うん、約一名仕事どうしてるのかメール送りつけてきた人居たけど。
とにかくそういう訳であたし側からのお返事は、大変申し訳無いですが一括返信という方法を取らせていただきます。
勿論誰からも苦情は来ないようにちゃんと工夫するよ。
かしかしかしっと打って、送信。
『差出人:#奈々
本文:態々構ってくれて申し訳無いけど、あたし昨日急な人事異動でバサラ学園やめる事になったんだ』
メールボックスに収まりきらないほどメールが来たのはこれが初めてだった。
エイプリルフール