シリフ霊殿
Schild von Leiden

古代種
 くすくすと少女達の笑い声が聞こえる。
「そろそろだ」
「予想より早かったね」
「もうちょっと沢山居るかと思ってたよ」
「まぁ、その分強い奴等も多いでしょ」
「楽しそうだね」
「そっちこそ」
 くすくすくす。
 草木も眠る丑三つ時、人目を忍んでの密談である。
「天下から統治者が消えて数年」
「各地に次代の王を望むものが現れて数年」
 くすくすくす。

「戦国乱世が来るね」

 くすくすくす。
 まるで他人事の様に少女達は笑っている。
「ね、誰が王になればいいと思う?」
「別に、私は誰でも良いけどね」
「このままだと織田信長になりそうな雰囲気だよ」
「あ、おっさんパス」
「この面食い」
「という訳でおっさんは志半ばにして家臣の裏切りに遭うのでしたーぁ。そういう事にしたっ」
「光秀さんですか、唆しておきましょうか」
「その後に来る猿も綺麗じゃないからパスっ」
「家臣の男の人中々だったよ」
「性格が王様っぽくないっ」
「はいはい。じゃあ豊臣さんは隣の国にやられちゃうって事で」
「隣の国ザコいじゃん」
「それもそうだね」
 笑う二人を見咎める者は居ない。
 ただ月だけが長年の知己のように二人を照らしている。
「では日頃から信心深いお殿様には日輪のご加護をあげましょー」
「じゃあそのお向かいには鬼の力をあげましょー」
「ライバルだね」
「うん、ライバル」
「私は毛利元就が王様になれば面白いと思うな」
「そう?私はあっちのアニキに一票」
「あ、じゃあこういうのはどうだ。あの二人で天下分け目」
「いいねお互いの贔屓同士の対決」
「うん」
「東にも結構格好良い殿様居るから勿体無いけど、まぁいいや」
「それは、降伏させて家臣にしちゃえば死なないよ!」
「その手があった!じゃあそれでいいや」
「ふふ、『力』比べするの久し振りだね」
「そだね」
「どっちの殿様が勝っても恨みっこ無しで」
「もっちろん」
 楽しみだね。
 最後にそんな呟きを残して。

「さぁ、早く毛利さんちに『天啓』与えに行かなきゃ」
「そうそう、四国に『呪い』かけて来なきゃ」
「ついでに途中で明智さん唆して来ますね」
「じゃあこっちは豊臣の軍師を病気にでもしてきますね」
 二人の『少女』は、闇に散った。



 後には彼女等の知己が照っているのみである。



ダブルクロスのDロイスをお題にした企画。中二色入れずにこのお題やるの不可能だった
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