この人が窓を開けている事自体は別に今更珍しくも無いんだけど、
今日は窓の外を眺めて何やら微笑んでいるように見えたから、
ああ遂にこの人にもデレ期が来たのかなんて思ってしまった。
「……野菜?」
ひょいと横から覗き込んでもそれしか見えないけど、視線からしてこの人はそれを見て微笑んでいるようだ。
裏庭に学内の誰かが勝手に作ったらしい家庭菜園。
ナスやキュウリやネギやゴボウが盗みたいほど見事に育っている。
「良い育ち具合だ。主に恵まれたのであろうな」
ああ、同類が幸せなのはやっぱり見てて嬉しいのか。この人でも。
もしかするとこの姿でも同類と意思疎通など図れるんじゃないだろうか。
だとすればものすごく便利だと思う。個人的に。
と、畑の野菜を順に眺めていた視線が急に止まる。
そちらに目をやった瞬間、ものすごい勢いでカーテンを閉じられてしまった。
一瞬見えたのは、人の顔をした奇妙な野菜。何だありゃあ。
「……やっぱ同類でもああいうのは気持ち悪いと思うんですか」
閉めたカーテンを握り締めたまま小刻みに震えているのを見て尋ねる。
すぐに首が横に振られたので、気持ち悪い訳では無いと思ったのだが、
「あやつらには何故か会う度言い寄られるのだ……気味が悪うてならぬ!」
「……へー」
植物的には言い寄るほど美形なんだろうか、この人。
いや人間的に見ても美形だけど。
ともあれもう収穫期までこの人開ける窓変えるだろうなと思った、晩夏。
人外が大好き第四弾