視線を、感じる。
縁側に距離を置いて座る二人の、対岸から。
間に小さな菓子鉢を挟んで、その距離はおおよそ二尺。
人と人との距離としては些か余所余所しいのでは無いだろうか。
しかし何かを訴えるような奇妙な視線はずっとこちらへ注がれている。
横に座る主君は何か気になる事でもお有りなのだろうか。
そんな事を考えながら菓子鉢の中のお茶請けに手を伸ばす。
す、と元就様がこちらへ動く気配がした。
私になるべく気付かれないように、そっと。
二尺はあった距離はようよう半分になり、菓子鉢を退かせば手でも繋げそうな距離になった。
合点がいったので再び菓子鉢の中のお茶請けに手を伸ばす。
菓子に手が触れた所で、その上にそっと元就様の手が被さった。
「はい」
ので、お菓子を手渡し。
「元就様もお一つどうぞ」
「……うむ」
天然すれ違い