シリフ霊殿
Schild von Leiden

苺のミルフィーユ
 フォークの音が急に止んだので、窓を見ていた視線を前に戻した。
 目の前の元就は丁度食べ終わった皿を横の同じような数枚(重要)の上に重ね、
 新しいケーキの皿を自分の前に持って来た所だった。
「まだ食うのかよ」
「悪いか」
「いや、別に悪くはないけど」
「そうか」
「うん」
「……」
「……」
 皿の上にはミルフィーユが一つ。
 間に挟まってる赤いのは苺だろうか。
 元就はフォークを持ったまましばしケーキを睨み付け、
「剥ぐなぁぁぁぁぁッ!」
「む?」
 ミルフィーユやミルクレープのミルは千という意味、
 すなわち真なるミルフィーユはパイ生地を千枚重ねなければならないという、
 いや実際千枚重ねて作るなんて事は無くてあくまでも言葉のあやなんだろうが、
 とにかく俺の知ってるミルフィーユというのは少なくとも

 上から生地を順に剥がして食うような菓子じゃなかった筈だ。

「食べ方が分からぬのだ、仕方無かろう」
「いや、俺知ってるから!知らなくても知ろうとする努力をしろよ!」
「食べ方一つでそう味が変わるものでもあるまい。面倒だ、貴様が食べさせよ」
「えぇぇぇ……」



ミルフィーユって形崩さずに食べられたことないなあ
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