シリフ霊殿
Schild von Leiden

だって朝から何も食べてない
 じゃあ行こうか、と一歩踏み出した所で、
 唐突に今頃家で本でも読んでいるのであろう同居人の事を思い出した。
 何せ出発前に盛大に拗ねられたばっかりだったもんだから。
 貴様が一人で詰まらぬと喚くから無理をして取った休日を友人と過ごすのかと。
 言葉にはしてなかったけど多分そんな感じで。
 仕方無いじゃない先に約束しちゃったんだからと言い訳して聞いてくれる程、彼は素直な人じゃない。
 とはいえ御免なさいキャンセルして一日貴方と過ごすわなんて台詞を吐く程私は可愛らしい女でも無かった。
 だから今のこの状況だ。
 買い物に行こうとした一歩をふと止めて携帯を取り出す。
「何やってんの?」
「元就にご機嫌取りメール」
 キャンセルするような可愛気は無いけれど、これぐらいしておかないと後が怖い。
 この間はカーテンにコーヒーのでかい染みがついていた。
 普段そんなへまをするような人間じゃないから、明らかに嫌がらせだろう。
 つーか、あの染み落とすのにどれだけかかったと。
 少し折れるだけであれが回避できるというならこれしきのプライドは惜しくない。
「大変ねえ、我侭な彼氏持つと」
「我侭っていうかあれは俺様なだけですよ、俺様」
 まぁ、まったく御し難い訳でもないんでこうして付き合いが続いてるんですがね。
 えー元就へ……夕飯はうちで作るつもりだけど……何が食べたいですか……っと。
 送信して一分程で携帯が鳴った。
 元就にしちゃ早いな。まさか携帯電話握って待機してた訳でもあるまい。


 『  件名:待てぬ 本文:なし  』


 ……
「とりあえずさ……帰ってあげな?」
「うん……」



現パロ元就は家への執着が薄くて平和そうなイメージ
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