シリフ霊殿
Schild von Leiden

花と言の葉3
 武器と武器のぶつかりあう鈍い音が響く。
 最近物騒になったと人は言うが、武器と武器のぶつかり合いという日本では物騒極まりない図が、
 まさか中学校の屋上で行われているとはまさか思いもしないだろう。
 しかも争っている片方は曲がりなりにもこの学校の生徒、
 もう片方はといえばイタリアマフィアの若きボス(手下つき)である。
 武器を持った人間と人間、トンファーと鞭が互いにぶつかり合っては離れる。
 階下の人間が気付かないのが不思議な位に物騒かつ異常な光景だった。

 もっとも争いの理由を尋ねれば、双方口を揃えて「特訓」と言うに違いない。



 物騒な特訓には、ちゃんと傍観者も居る。
 手下が居ないと本領発揮されないというボス体質なボスの為、
 彼の背後には常に部下が一人、ただ突っ立って特訓を観戦していた。
 しかしいつもならば彼一人だけな筈の傍観者が、今回はもう一人。
 彼とは反対の陣営、屋上の給水塔の上に、少女が一人腰掛けて二人の特訓を見守っていた。
 ……正確を期すと、彼女の場合は一人と勘定すべきか些か怪しいのだが。

「なぁ、あのカワイ子ちゃん誰だ?恭弥の彼女か?」
 ボス体質なボスことディーノが、相手の隙を窺いながら声をかける。
 恭弥こと雲雀恭弥は別に、と隙のない構えを一切崩す事なく答えた。
「またまたー、別にじゃねえだろ。ただの女の子がこんなもん見に来るかって」
「確かに#奈々は『ただの』女子ではないだろうけどね」
 応援に来てるだけだよ。
 言って雲雀は束の間背後の少女に視線をやる。
 その隙を見逃さず、ディーノが攻めに転じた。 
 咄嗟に受けはしたものの、不意をつかれて雲雀の足元が一瞬よろめいた。
「くっ……」
「もらった!」
 風を切る音と共に、ディーノの鞭がしなる。
 しかし直後、その鞭は何かにぶつかったような感触と共に弾き返された。
「……え?」
 勿論、今ようやく体勢を立て直したばかりの雲雀にそんな事が出来よう筈もない。
 背後にいる自分の部下も同様だ。
 まさかと給水塔を見れば、少女は丁度弾き返されたナイフを受け止めた所だった。
 ディーノが自分を見ているのに気付くとにこっと笑い、手の仕草で続けてと促してくる。
 雲雀は少女のそんな芸当を見ても驚く事もなく、
 むしろ彼女を振り返って「応援ありがとう」と礼まで言う始末である。
 雲雀の言葉を受けて、少女は更に可愛らしく笑った。
「さ、続けようか」
「……きょーやぁ」
「何?」
「あの子、マジで何?」
「言わなかったかな?ただの応援だよ」



ディーノのキャラを掴み切れてないですね
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