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シリフ霊殿
Schild von Leiden

01.華原涼太
 研究室に入ると、丁度カプセルから“彼”が目覚めた所だった。本当に目覚めたばかりなのか、部屋と自分の身体を不思議そうに見回している。
「おはよう」
 私は今日の実験の分の資料を机に置きながら声をかける。
 “彼”は自分以外の存在にびくりと反応し、そしておずおずとこちらを向いた。イクラのような赤い目だ。作業中には相手の目を見る事は出来ないから、目覚めた彼らの目を見ることは私の密かな楽しみの一つでもある。
「名前は言えるかな?」
 こちらを警戒している様子なので、両手を広げ武器を持っていないことを示しながら問いかける。
 彼は一つ瞬きをしてから、自分自身に言い聞かせるようにゆっくりと答えた。
「僕、は……華原涼太」
「涼太か。良い名前だ」
「……あの、此処は」
「此処は私の研究室。君は私の『ドール』だ」
 分かるね、と言うと、やや逡巡しながらも頷いた。
 『ドール』についての「特別な技術によって蘇らされた死者が、主人に仕え働くもの」という定義と、自分がドールであることに悪感情を抱かない程度の教育は、彼を作成する段階であらかじめ脳にインプットしてある。
 それならそれで他の基礎知識も入れておけば一々説明する必要もなくなるのだが、目覚めた時の初々しい反応が見たくて、態々与える知識は最低限にするようにしている。我ながら悪趣味だ。
「分かって貰えたなら早速仕事を頼もうかな。諸々の説明は……うん、誰にやって貰おうか」
 出来れば同年代がいいだろうと年齢を尋ね、十七、と返って来るのを聞いてから頭の中で候補を絞る。
「アンヘルは来てまだ日が浅いし、朔夜や嘆は愛想がないからな……優夜に頼もうか。優夜!」
 少し大きめの声で呼ぶと、研究室の扉が開いて優夜が顔を出した。
「サリュー。呼んだかな、ご主人様?」
「その呼び方はやめる様に言った筈だが」
「だって俺達のご主人様だろう?」
「全く君は妙な所で反抗的だね……新入りだ。色々と説明してやってくれるかな」
「了解。じゃ、こっちについて来て貰えるかな?」
 いきなり妙な言葉を連発する先輩に面食らいながらも、涼太は優夜について部屋を出て行った。

 ……さて、これで数日は退屈せずに済みそうだな。
 ゆったりした気分で珈琲を飲んでいると、やにわに扉のノックされる音がした。



ネクロニカはいいゲームですよ。ぐろいけど
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