シリフ霊殿
Schild von Leiden

神とは名ばかりの
 神というのは所詮人間が創り出した幻想だと思うんです。例えば大昔に死んだ偉い人だとか、天を廻る太陽だとか、そんな科学的に考えれば到底私達を救済することなんか出来そうにない存在ばかりで、実際救われるなんて確約も得られていないのに、偶然とさして違いもないようなレベルの奇跡を待ち焦がれるなんて、端から見れば滑稽だと思いませんか。基教など聖職者が神の威光を嵩にきて思いつく限りの破戒を尽くし、それでも罰が降ったという話を聞かないのも不思議な話です。つまり端的に申し上げると私は生まれてこのかた何かを信仰するという行為が未だに出来ずにいるんですが、私には何か罰が降りますか。告解室の向こうで求導師様が息を詰まらせるのが分かった。一途に神を信じて生きてきた人には理解できない考えだろう。間違っていると諭されるかもしれないし、地獄に堕ちろと罵られるかもしれない。まあこの人は優しいからそんなことはしないと思うけど。だからこそ、それを見越して、態々ここまで足を運んで悪びれもせず懺悔を聞かせたのだけど。ささやかな嫌がらせ、否、愛情表現でもいい。さあ貴方はこんな私をどう受け止めてくださいますか、それともこんな歪んだものは跳ね除けてしまいますか。貴方の答えが聞きたくて、私は今ここにいるんです。
「……そんな、そんな悲しいことを言わないでください」
「悲しいですか」
「悲しいです。貴方に罰が降るなんて、考えるだけで、私は」
 ああ、貴方はやっぱりお優しい、求導師様。



お題だった気がするんですが書いたのが相当昔でよく覚えてないという
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