シリフ霊殿
Schild von Leiden

執事喫茶BASARA
 お嬢様、今日の紅茶だが……
 ……何だ、その面妖な格好は。気でもふれたか?
 はろうぃん?
 そういえばそのような異国の風習があったな。
 成程、先刻伊達が話していたのはそれか……
 我は書物でしか知らぬが、確か西瓜をくり抜いて提灯にするのだったか?
 ……煩瑣い、笑うな。
 知らない知識を訊ねて何が悪いのだ。焼き焦がすぞ。

 話が逸れてしまったな。
 それで、今日は何の茶を所望なのだ、お嬢様?
 ……何だその奇妙な表情は。そこまで驚く事でも無かろう。
 我がお嬢様に紅茶の銘柄を指定してもらうのはいつもの事だ。
 何度も言わぬぞ。いつもの、事だ。
 例え異国の祭りの日であろうが日輪がお隠れになる日であろうが、
 我がお嬢様に紅茶をお淹れする事とは一切関係が無い。
 どのような日であろうと、望まれさえすればお嬢様をおもてなしする。
 それこそが我の使命だ。違うか?
 〜い、いちいち素直に反応するな気色が悪い!

 茶が入ったぞ。冷めない内に飲んでしまえ。
 ん、それか?それは茶請けだ。
 伊達が、今日は特別な日ゆえお嬢様に菓子を差し上げよと言っていたのでな。
 見えなんだか?
 実は我も伊達にもらった衣装を着ているのだ。
 まぁ、衣装といっても翼だけゆえ、背後から見ようとせねば分からぬであろう。
 ……こら、席を立つのは紅茶を飲んでからだ。行儀の悪い。



10.悪魔
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