シリフ霊殿
Schild von Leiden

執事喫茶BASARA
 お待たせしました、お嬢様。軽食のサンドイッチになります。
 先程は元親公に絡まれて大変だったようですね。
 これでも食べて少し落ち着いて下さい。
 何故知っているのかって?
 だって先程彼の頭に薬缶を投げつけたのは私ですから。
 この手に持つ鎌がもう少し切れ味がよければ、
 野菜の代わりに元親公の首を刻んでしまえたのですが。
 ただ仮装の一環で手に持っているというだけでは、
 正直な所、政宗公には悪いですが不便なだけなのですよ。

 お嬢様も仮装をしておいでなのですね。よくお似合いですよ。
 ところで、お嬢様はあの言葉を私に言っては下さらないのですか?
 この日に子供達が口にするというあの言葉……
 『とりっく・おあ・とりいと』ですよ。
 異国の言葉で『菓子か悪戯か』という意味なのだそうです。
 勿論私は菓子など持ってはいませんよ。
 ですがお嬢様が一言その言葉を言って下さりさえすれば、
 私は貴女に悪戯をしてもらう事ができるのですよ!
 ああっ……私、一体どんな悪戯をされてしまうのでしょう。
 考えるだけで愉しくてたまりませんよ!
 フフ……ククク……アハハハハ!!

 ……痛いですね。
 私の薬缶はともかく、皿は下手をすると割れて大変な事になるのですよ。
 しかし、私に当てた事はともかく、その後綺麗にお嬢様のテーブルの上に着地させた腕前に免じて、
 今回は手を引く事にしましょうか。
 特別ですよ。



08.死神
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